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ちっちゃいけど、お国を守ってるつもりです。  作者: 弦巻耀
第1章 運が導く就職活動
8/15

☆補足ネタ④ 入間基地のこと



 作中の会話の中に出てくる「入間基地」は実在の航空自衛隊基地です。埼玉県南部にある狭山市と入間市にまたがって位置しています。

   挿絵(By みてみん)


 実は私自身、小さい頃に七年ほど狭山市に住んでおりました。小四の時に「小江戸」川越よりやや北のほうに引っ越したのですが、引っ越し先も入間基地まで片道1時間弱というエリアでしたので、就職で実家を離れるまでは毎年のように入間航空祭に出没しておりました。

 まあその、いわば「元地元民」です。


 この入間基地、他の空自基地とは一線を画す特色があります。それは、駅から徒歩ゼロ分という超好立地! というか、私鉄が基地の中をぶち抜いて走っています。。


   挿絵(By みてみん)

(↑何年か前の入間航空祭のパンフレットに載っていた地図)


 セキュリティ上どうなんだと常々気になっているのですが、これまで入間基地が「電車を使ったテロ」にやられたという話は聞いたことがないので、まあ、大丈夫なんでしょう。


 長い滑走路を持つ空自基地は、専有面積が広大であるがゆえに、そのほとんどが駅から遠い所にあります。駅から遠いとアクセスが非常に困難です。航空祭当日は最寄り駅から臨時バスも出ますが当然ながらめちゃ混みですし、自家用車で行こうもんなら基地に近い駐車場に前日の夜から待機していなければなりません。帰りだって大変です。

 数年前、小松基地(石川県)の航空祭に行ったのですが、帰りのバス乗り場が長蛇の列だったので最寄りの小松駅まで歩いてみましたら、あり得ないほど遠くて真面目に死ぬかと思いました。駅近物件はホントにありがたいものです。


 入間基地の航空祭は、毎年、十一月三日の文化の日に開催されます。国民の祝日が当てられているというVIP待遇(?)の入間航空祭はスゴイです。

 何がスゴイって、毎年ブルーインパルスが来てくれるというのもスゴイですが、とにかく来場者数が半端ナイです。首都圏にある基地なので人が集まりやすいのは必然なのですが、晴天に恵まれると実に二五万人以上が入間基地に押し寄せます。ドラマ「空飛ぶ広報室」が放送された2013年には三十万人超えを記録したそうです。


 航空祭当日、最寄り駅である稲荷山公園駅は、朝から夕方まで通勤時間帯の山手線のような状態になります。メイン会場と駅や門の間には線路があるため、飛行機を見に来た大群衆は、一時間に上下合わせて八本以上の電車が通過する踏切をぞろぞろ渡らねばならない、という大変恐ろしいコトに……。特に、航空祭終了時には二五万人の大半が一斉に駅に向かって動くので、とんでもないことになります。群衆を統制するために「DJ自衛官」が出動した年もありました。


   挿絵(By みてみん)

(↑2015年の入間航空祭で。本当にお疲れ様でございます)


 時々、他の基地の航空祭レポートで「恐ろしい混雑ぶりだった」というような記述を見かけますが、来場者数を調べてみるとたいてい八万とか十三万とかいう数字だったりするので、入間の民は「冗談じゃねえ、こちとら二五万だぞ!」と一人バウバウ吠えまくってしまいます。


 そんな激混みの入間航空祭に身長148.5㎝の佳奈さんが行ったらどうなるか……。おそらく彼女の視界はこんな状態(↓)


   挿絵(By みてみん)

(↑身長149.8㎝の視点から撮影。2017年の入間)


 はっきり言って、何も見えん。地上展示の飛行機なんて絶対に見えん。実際、↑の写真を撮った時は、人混みの向こうにブルーインパルスが並んでいたはずなのですが、全く見えない。あ、拡大したらかすかに尻尾が……(涙)


   挿絵(By みてみん)



 飛行機は空を飛ぶものなので、目の前が人波で溢れていてもフライトを見る分には困りません。


 しかし、ブルーインパルスの「展示」は、六名のパイロットさんが一糸乱れぬ隊列を組んでそれぞれの愛機に乗り込むところから始まります。やや高い金属音が響く中、パイロットさんは整備員さんとハンドシグナルを交わしながら、カッコよく飛行前点検を披露。エルロンとラダーをぴこぴこ動かして、「異常なし」を確認したら六機が一列に並んで整然と滑走路に向かいます。

 飛行機が発進するまでの一連の統制美も、ひとつのショーになっているのです。


 華麗なフライトの後、着陸した六機は美しい隊形を保ったまま駐機場に戻ります。整備員さんの鮮やかな誘導で、青と白の飛行機たちはお客さんの前に綺麗に整列。エンジン音がふっと消えると、パイロットさんたちが各機から降り立ち、これまた綺麗に行進して、最後は揃って敬礼して厳かにショーを締めくくる……、らしいです。


 なぜ「らしいです」という書き方なのかと言うと、私はこの地上パフォーマンスをひと目たりとも見たことがないからです。ブルーインパルスがタキシングしているところすら、入間では見たことがありません。先の写真のとおり、駐機している姿を拝むのさえ至難の技なんすから(怒)。


 地べたで展開されるショーを肉眼で見るには、メイン会場の最前列付近を確保しなければなりません。そのためには、おそらく当日の夜明け前から基地の門にへばりついていなければならないでしょう。さらに、開門時に門からメイン会場となるエプロンまで猛ダッシュする走力も必要です。

 シロウトには実に厳しいイベントです(怒×2)


 ブルーインパルス好きな佳奈さんも、きっと「地上のブルー」はろくに見たことがない人生を送ってきたはずです。幼稚園の頃はお父さんに肩車してもらって辛うじて見ていたかもしれませんが……。


 後ほど本編でも触れますが、現在、入間航空祭では戦闘機の展示飛行はありません。昔はF-15もF-4も飛んでいたのですが、最近は住宅密集地である地元に配慮してか、戦闘機の類は帰投時しか飛ばなくなりました。

 ゆえに、戦闘機の展示は基本的に地上のみ。そして、その地上展示ですら背の低い人間はほとんど見ることができない! こんな悲劇があってよいのかあぁ!


 ぶっちゃけ申し上げて、いろんな飛行機をゆっくり見たいという方といろんな爆音をじっくり聞きたいという方は、長い道のりを歩くべく足腰を鍛えて、他の基地の航空祭に出向くのがよろしいかと思います(西日本には、最寄り駅から歩ける範囲にある基地もいくつかあります)。


 とりあえずブルーインパルスを見てみたいという首都圏住まいの方々にとっては、やはり入間は手軽に行けるという点で非常に好都合ではあります。

 「元地元民」といたしましては、現地入りの際には一日分の食料と飲料水を持参することをお勧めします。基地内でもご飯系の出店はいろいろ並びますが、ひとつ物を買うのにいちいち大行列となりますので……。

 出来ることなら自前のトイレも背負って行きたいところですが、こればっかりはどうにもならないので、長い列に並ぶしかありません。トイレが一時間待ちとか余裕であるので、ブルーのフライト予定時刻の一時間前には必要を感じなくても用を済ませに行くのが肝要でございます(マイトイレットペーパーを持っているとさらに安心)。


 ……と入間航空祭の激混みぶりに嘆いている私めは現在は埼玉県外の人間ですが、入間までは電車を乗り継いで1時間ちょっとのエリアに住んでおりますので、文化の日が近づくといまだにウズウズしてしまいます。当日が快晴だと、やっぱり食料と水を持っていそいそと現地に出かけていますです。


 飛行機を見るには決して好条件とは言えない入間に何ゆえ通ってしまうのか。

 もはや盆正月に実家に帰省するのと同じ心境なのだと思います。入間基地は私の第二の故郷でございます。



 あ、入間基地では春に「ランウェイウォーク」というイベントもやっています。二千メートルほどの長さがある滑走路を文字通り歩く体験イベントで、開催日には所属航空機の地上展示もあるのだとか。

 入間基地には戦闘機はいませんが、ブルーインパルスと同じ機体のT-4部隊が所属していますし、でっかい輸送機やらヘリやらもいますので、なかなか楽しそうです。なんでも、日本に一機しかないヒミツの飛行機も見られるらしいですし……(小声)。


 ランウェイウォークは航空祭と異なり、入場は抽選です。募集定員は千人。元部内関係者に聞いた話では、以前は誰でもウェルカムでやっていたのが、あまりに来場者が多くなり手に負えなくなってしまったので、やむなく抽選形式に変更したのだそうです。

 航空祭では二五万人超でひしめきあうというのに、ランウェイウォークはわずか千人で入間基地を堪能できる! なんという天国! これは行かねば! ……と、気合いを入れて応募葉書を出しているのですが、未だに当たりませんねえ(号泣)。




(次話、本編に戻ります)

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