お礼
今日の星見はどこか変である。休み時間には教室まで 来て廊下のからこちらを見てくる。 用事かと思って近づくとサッといなくなるので……不思議だ。
明に聞いたらため息、琴羽だと「鈍感だよ」と言われる始末だ。
答えが出ないまま放課後が来てしまった。
また屋上では星見と二人っきりなっている。明は勉強、琴羽と戸部はスイーツ店へと……この状況は作られたような気がする。
「あのさ、星見…用事あるのか?」
「…ない」
望遠鏡を覗いてると思ってたら、チラチラと視線を向けてくるのは止めてほしい。気が気ではない……と言うか何かやらかしたかな?
「よ…よし、ゆっしん!」
「お……おう」
決意溢れる声で呼ばれて気後れしてしまった。いや星見がこんな声を出すなんて思わなかったからな。
星見は自分の鞄から取り出したのはリボンが結んである小さい、袋だった。
「…この前のお礼」
なんかお礼されるような事はした覚えがないだが。
「男の人に連れて行かされそうになった時」
「あぁ」
思わず相手に殴ってしまったのですぐに思い出した。後悔はしてないだけど、暴力的済ませて星見に見られてた罪悪感がある。
でも、表情を変えない星見が怯えている顔を見て抑え切れなかった。
「もう少し早く間に合えばよかったんだけどな」
「結果的にグッジョブ」
親指をあげてどや顔してるので笑ってしまう。
お礼とされる袋を貰い開けてみるとクッキーが入っていた。形が マチマチで手作りなのがわかった。
「星見が作ったのか?」
「それなり料理は得意。昔はお母さんと作った」
なんか星見が家庭的な一面があるんだ……。
「…おかし作りはかなり得意」
「知華にも女の子な趣味を持って欲しいだけどな」
「人それぞれ」
それを言われると痛いな……何も言えなくなる。
クッキーを一個だけ口に入れて食べた。
「不意討ちは卑怯…ど…どう?」
「得意なだけあって、美味しいな」
「安心」
家族じゃない誰に食べて貰うのは初めてなんだろうな。そして思い出す黒歴史…料理が不得意だった頃の琴羽は、明の為に腕を上げようと作ったのを味見役という処理……。地獄でした。
次回予告
戸部「今頃、上手く渡してますかね?」
琴羽「大丈夫だと思うよ」
戸部「その確証はどこから?」
琴羽「女の勘ならぬ、私の勘。次回予告『嫌み』」
戸部「そこは女の勘であって欲しかった!」
琴羽「この後はやらかすと思うよ」




