新入生
結局、ギリギリ間に合わないず遅刻扱いされてしまった。
机にひれ伏して、たぶん両親に報告されるだろう…担任は両親とは高校からの付き合いで仲がいい。
「遅刻なんて、どうした?」
やってきたのはメガネを掛けた男子…袖中明。担任の袖中咲の息子である…。母親に似たのか成績優秀……顔もそれなりに整ってるので、女子からそれなり人気があるが声は少ない。
「ダメだよ、遅刻なんかしてたら」
そんな明の隣にいる黒髪ロングの女子、相楽琴羽。こちらもお互いの両親も高校から付き合い。有名出版社の相楽の令嬢……そんな感じしないが。女子が明に寄り付かないのは琴羽がいるからだ。琴羽は明の事が好きなんである…まぁ、明はどう思ってるかは……この鈍感野郎が。
「まぁ、いつもたまに起こす遅刻だよ」
「小学校から変わってないな」
それを言われるとなんとも言えない。一年に数回は遅刻してしまう…弟たちは無遅刻なんだが……兄としての威厳が。
「明も結心、新入生たちだよ!」
遠い目をしていた俺と呆れていた明を呼んで、窓の外を指す琴羽に釣られて外見た。
一階の渡り廊下を教師に連れて、案内されている今年入学した一年生たち。
「初々しいね…」
「俺らも去年はあそこにいたんだけどな」
「琴羽ならいつもそんな事だろ」
「明、いつもってヒドイよ!」
明の言う通り、琴羽は天然のんびりなので母さんたちも「少し母親似たか」と言っていた。
ワイワイとやっている明たちは無視して新入生たちを眺めていた。
すると一人の女の子が立ち止まりこちらを見上げた。身長は低く肩まで切り揃えられた髪、可愛らしい顔たち……そんな事を思っていると目が合った。
これって不審者に見えるよな…どうするどうする?
焦っていると向こうから小さく手を振ってきたので、思わず振り替えした。
「結心、誰か知り合いいたの?」
いつの間にかじゃれ遭いが終わっていた琴羽に聞かれた。
「いや、特には」
視線を戻すがもう通った後だったみたいで、誰もいなかった。可愛い子だったな……。
「おーい、お前ら授業始めるで」
いつ間にかチャイムが鳴っていたらしく、担任がやってきた。
「なんや、坂雪可愛い子でもおったか……両親に報告するで」
「なっ、それはやめてください!」
クラスメイトの笑い声が響いた。
そんな事されたら、家でも弄られるじゃないか!ただでさえ、初恋でも弄られたのに。
こうしてあの子を忘れてしまった。
次回予告
明 「まだ出なくてよかっただが」
作者「いやいや、君だって重要キャラだから早めに出すからな!」
明 「小テストが近いから勉強したかったが仕方ない。次回予告『出逢い』…さて勉強するか」
作者「流れ重視かよ……由々に似たな」