初めて
恒例となった放課後の天体観測、快晴な太陽を浴びながら……と思っていたが。
「曇りだな」
「…曇り」
「曇ってるね」
「見事な曇り」
空に広がるのは曇ばっかりだった。まぁ、当然快晴ばかりではないよな。
今日は琴羽と明が参加していた。琴羽に連れて来られた明だな。
「…観測は無理……終わり」
星見の言葉で望遠鏡を片付けた……慣れてしまってる自分。
部室に寄って望遠鏡を置いてからどうするか話し合ったが、星見はビックリするほど遊びとか無知にだった。
「そうだ、久しぶりにゲーセンに行かないか?」
「…ゲーセン?」
「ゲーセン、そうだ…明、プリクラしたいな」
「…拒否権は……ないのか」
そんなこんなで近所のゲームセンターにやってきた。興味深そうに辺りを見回す星見がいて、ちょっと可愛かった。和んでいたがフッと思い気付いた。
「星見、ゲーセンも初めてなのか?」
「…そう…とても興味深い」
明たちにも声を掛けようとして見回したがどこにもいなかった。 疑問を持つ前にlineの着信音がなった。琴羽からだったが『二人で楽しんで♪』……明の冥福を祈っておくか。
「星見は何が見たい?」
「……何があるか知らない」
「ごめん、そうだったね」
初めてなんだから何があるか知らないよな。迂闊だったな……女子をエスコートするのはどうするか。
星見も女の子なんだからこっちかな?
「これは?」
透明なガラスケーズ内に沢山のぬいぐるみなど入ってある……クレームゲームだ。
星見がトコトコと歩いてクレームゲームをひとつひとつ覗いて、何が入ってるか見ていた。後ろから着いて行っていたがあるクレームゲームの前で立ち止まった。
「どうしたんだ?」
「…とても可愛い」
クレームゲーム内にあったのは星の形したぬいぐるみだった。こんな時でも星が好きだな。
「どうやって?」
「このボタンでアームを動かして、欲しいのを取るんだ」
「…んっ、わかった」
やり方を教えると星見がピンクの小さい財布から100円を取り出して、アームを動かす……ちょっと横に動いてから止まった。
「これ壊れてる」
とんでもない一言で笑ってしまった。まさか、やった事もないのはわかるがやり方はボタンの横に書いてる。
今度こそちゃんと教えてあげたが財布を覗いてから落ち込んでる。……察するにお金がないんだな。これが妹ならウルウルさせながら懇願する目がくるが……星見だからな、俺は財布を取り出してお金を取り出してクレームゲームに入れた。一言で言うと簡単に取れた。
「ほら、欲しかったんだろ」
「…………ありがとう」
受け取ったぬいぐるみに顔を埋めて小さい声でお礼が聞こえた……これでよかった……ミスったら、次なかったんだよな。
そして顔を上げた星見を見て動悸が激しくなった。微笑んでる星見の顔……。
次回予告
明 「うまくやってるようだな」
琴羽「そうだね…超絶鈍感な結心だからね」
明 「そこまで酷くないだろう。次回予告『嘘をつくな』」
琴羽「でも鈍感は認めるだね」
明 「俺たちでもわかるのにな」
琴羽 「そうだねー」




