梅雨だから
日課となりつつある星見と星…明るくて出てないが天体観察している。たまに琴羽たちが来たりしてるが、今日は二人だけだった。 空は雲が出てきてるが、問題はない。
星見の監督もなく一人で望遠鏡の接地、調整が出来るようにはなった。
「よっと…星見、出来たぞ」
「グット」
入れ替わるように望遠鏡を覗く星見をいつも後ろから眺める俺。
熱心に眺めている星見が眩しく……そして少しの嫉妬。夢中になる事あって羨ましいのとかつて自分もあった。いや、こんな事を考えて仕方ない。
空を見上げると東から暗い雲が近付いて来てる…雨雲っぽい。でもこっちに来ても帰える頃だろう。鞄から単行本を取り出して読み始めた。
時間も忘れて読んでいたら、隣に星見が座り込んだ。
「…もう終わりか、今日早いだな」
「雲出てきた」
空を指を差して、見上げるとさっきの雨雲がもうこっちに流れ込んでいた。
ポツリと頬に雨粒が当たった。そしてポツポツと降ってきたと思ったら、どしゃ降りとなった。
「不味い」
屋上の床にいくつもの黒い点が出来てゆき、雨粒は細かいのから大粒へと変わり、量も一瞬で増した。
「校舎に入ろう」
「……っ」
星見の手を引いて、屋上のドアの中に駆け込んだ。普通の雨だと思ってたがゲリラ豪雨だった。すぐに中に入ってよかった。でないと一瞬でびしょびしょになっていた筈。
「……あ!」
どしゃ降りの中に戻ろうとする星見を慌てて止めた。
「待て待て、外は雨だぞ!」
「望遠鏡!」
しまった!望遠鏡が出しっぱなしだ!
「取ってくるから、そこで待ってろ!」
鞄からあるモノを取り出し星見を残して、ゲリラ豪雨の中に飛び出した。案の定、制服は一瞬でびしょびしょになりシャツは体に貼り付く。しかも全力では走らず、小走りで向かった。
「びどい、降り方だな」
望遠鏡の所にたどり着いて、持って来ていたジャージを被せ抱え込むように屋上のドアへと戻った。
「ふぅ…」
ハンカチを取り出した星見が望遠鏡よりも俺の顔を拭いてくれた。
「ありがとう…望遠鏡を拭かないと…ジャージを被せてたが大丈夫か?」
「すぐに乾かせば大丈夫……でも、ゆっしんが濡れてる……」
「大丈夫だから、部室に戻ろう」
「でも…その、あと鞄が」
望遠鏡を入れていた鞄も外に置きっぱなしだった。もう一回取りに戻った。
俺が望遠鏡を抱えながら、星見が先導のもと天文部まで移動した。足下もびしょ濡れなので廊下で滑るのと先生に見つかるのが怖い。
部室入り望遠鏡の分解と乾かすのは任して、俺はトイレで濡れたシャツとズボンを絞っていた。パンツの中までびしょびしょ…恐るべしゲリラ豪雨。
星見の所に戻るのよく分からないが分解された部品たちがタオルの上に置かれていた。
「望遠鏡は大丈夫だったか」
「…ん、問題ない…」
「雨が止むか弱まるまで待機だな」
「…わかった」
次回予告
琴羽「うぉぉぉ、ゲリラ豪雨だね!」
作者「こっちは猛暑なんですがね!」
琴羽「扇風機だけで夏を過ごしてるのは凄いよね」
作者「小さいクーラーは着いてるがうるさくて使いたくない」
琴羽「倒れないでね。次回予告『知ってる』」
作者「気を付けます」




