プロローグ
日射しが突き刺さる6月、山に作られた道路の急勾配を登ってゆく。
自転車のロードレースは厳しいスポーツとしてスポーツ選手たちに知れ渡ってる…その中で山登りは本当の地獄である。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……」
息があがり呼吸が苦しい。立ち止まれば苦しさから逃れるが足を止まらない。深く息を吸いペダルを蹴るように回して、少しずつ前に進んでいく。
汗が乾いたアスファルトに落ちて濡らしている。
「もう…少し…もう少しで…」
急坂道の終わりが感じられるほど、近かずく度に足に 入れる力がましてくる。毎度、「もうやめたい」と思っているんだけど、また次のレースに参加している。
やめないのは、自分でも不思議に思ってるが…すぐに前も同じ事を思っていたのを思い出す。
急勾配を登り切った後にある……風を切り、猛スピードで急斜面を駆け抜ける。近くの景色はすぐに消え去り、遠くの景色だけがゆっくりと過ぎていく。それは最高に楽しい時間だった。
そして気が付くと今までのツラさは忘れて、またペダルを踏みつける。ただ楽しいから、やめないだけだ。
人生は上手くゆく事は難しい、誰も予想が着かない事の連続である。なんの予兆もなく失ってしまう…いや、閉ざされてしまう。
そして、理解する……得るモノばかりではない事に……。
ピピピピピピッ!と電子音……目覚まし時計から鳴り響き手を伸ばしてスイッチを押して止めた。若干眠気を感じながら、ベットから降り、両親の母校である制服に着替えて下に降りてゆく。
食卓では両親と弟と妹が朝食を摂っていた。
「おはよう……」
「あぁ、おはよう」
「「おはよう、お兄ちゃん」」
「おはよう結心、ご飯食べる?」
「これで食べさせて貰えなかったら、お昼まで持たない!」
母さんが「はいはい」と笑いながら、朝食を持って来てくれて食パンとコーヒーを胃に収めていく。
「じゃあ、時間だから先に出るな。結心、巡、知華も遅刻するじゃないぞ」
父さんが席を立って仕事に出掛けた。そして弟たちも家を出ていく。
先に食べていただけあって早い。まだ時間もあるからゆっくりしててもいいか
「結心、ゆっくりしてていいのかな?」
母さんが掲げられている時計を指を指して、確認すると顔を青くしてしまった。8時10分……今から出ないと間に合わない!
「遅刻する!」
「そこは変わらないね……」
呆れられてるが、今はそれどころではない。また遅刻するとまたあの教師に弄られる!
「行って来ます!」
鞄を持って家を出ていく、その際に「気が付けてね」と聞こえた。ガレージに停めてある一台の自転車を一目してか小走りで学校に向かっていく。
次回予告
結心「期間開けずにまた連載してるがいいのか?」
作者「思い着くだから仕方ないだろ。ハルたちもやっていた次回予告だ」
結心「これはまだやるんだな。次回『新入生』」