12 ニラ発見!。
「んん? 狩った獲物はみんなで分けるんじゃあ?。」
確か、そんなことを言っていた気がするが…。
「お、おうなのじゃ。ももも勿論なのじゃ。独り占めなんて考えてな…ないのじゃ。」
プイスとそっぽを向いて答える、シェーラ。
あー考えてたんだな、それにしてもわかりやすい娘だな。しかし、そう考えると、GKは相当美味いって事になるな。じゃあその最上位種である所のSGGKってやつはどれだけ美味いんだ? うーん。やっぱり食べてみたいな。
「獲物は狩って来た者が最初に取る部位を決められるのじゃ。じゃから…美味しい部位で美味しい物を作ってほしいのじゃ。あのお魚は美味かったのじゃ。お主が作ってくれたら。普通に食べるよりも美味しくなるに違いないのじゃ。な? いいじゃろ?。」
シェーラは気まずそうに説明をした後、私の袖を摘んでもう一度頼んでくる。
いや~美味しかったと言ってもらえるのは非常にありがたいのだけどね。私は、料理人じゃなくて、食専なんだよねぇ、本来は。まあ。このGKには興味もあるし、正直食べてみたい。しかしこの世界独特の食べ方にも興味あるんだよんねぇ。さっきからちょくちょく魔眼で見てるのだけど、生えてるんだよね。食べられそうでかつ、元の世界で見たことあるようなハーブとか、おそらくそれを使った独特のヤツがあるんじゃないのかなぁ。
ふと当たりに目を向けると、何やら見慣れた物が地面から生えている。
ん? あそこに生えてるのって、ニラじゃないか…な。……にら!? うおう。ニラがあるじゃないか。ニラと醤油の相性ってばっちりなんだよな。こう。なんて言うの? ベストカップルって言うか、そう。そんな感じ。ニラに似た毒持ってる草もあるけど、私の魔眼は食えるって言ってるし…多分ニラで間違いない。…欲しいな。ん。ニラがあるってことは、アレが出来るじゃないか。いいな。考えてたら食いたくなってきた。
私が沈黙して、色々考えているのを、もったいつけていると取ったのであろう。
「来たばかりのお主が村に行きたいってことは、何か欲しい物があるのじゃろ。儂がそれを用意するのじゃ。だから何か作ってほしいのじゃ~。」
私の袖をクイックイひっぱて懇願してくる。
えらく気に入られたものだ。そんなに美味しかったのか? 素材が良かったからか美味いは美味かったが、結構普通の焼き魚と刺身だったはずなんだが。まあ別に作るのは構わないかな。たった今、食いたいものが出来たしな。それに、まあ欲しい物も用意してくれるって言うなら断ることもないな。。
「ん? ああ。いいですよ。私も今、食いたいものが出来たので、それでいいのなら。」
軽く返事をする。
「本当じゃな。言質はとったのじゃ!。」
バンザーイと喜ぶシェーラ。
「欲しい物も用意してくれるのですよね。」
人差し指を立てて確認する。
「お…おう。儂が用意できる物で良いのならなの…じゃ。」
びくっとして身構えるシェーラ。
「あ、それなら大丈夫です。何せ、欲しい物は、衣類とか鍋とか食器などの生活用品ですから。」
「それなら、お安い御用なのじゃ。」
あからさまに、シェーラはほっとした表情を見せる。
いやいや。私も鬼畜じゃないので、そんなにものすごい物は要求しませんって。よしよしそれじゃあ。あれが、ニラかどうかを確認せねば。
私は、ニラと思われる草の所へと歩いて行く。
どうれ、これがニラじゃなければ、私は今の食欲の最大の持って行き場を失ってしまう。今、私が、食べたいのは、アレなんだよアレ。うん。
ニラと思われるものを手に取って、指ですりつぶす。
お~この匂いだよ。間違いないな。念のために少し食ってみるか。…これだよ。これこれ、このちょっと甘いこの感じ。間違いなくニラだよ、それもかなり上等の奴。良かった、良かった。これでアレが食えるな。そうと決まれば、たっぷり摘んでいくか。
いそいそと、ニラを摘んでいく。一抱えほど摘んだ所でシェーラから声がかかる。
「何をやってるのじゃ? その草は、食べられないのじゃ。そんな物を摘んで、どうするのじゃ?。」
怪訝な顔で言ってくるシェーラ。
「え? 食えない?。」
不思議な事を言う。魔眼でもう一度確認っと。…うん、食えるじゃないか。と言うか、私もう一口食べちゃったよ。…ああ、そうか成程。毒草の方と間違えてるんだな。名前は…何だったかな…確かユリ科のなにかだったと思うんだが…まあいいか。
「大丈夫。食べられますよ。私、これが大好きなんです。」
「ふ…ふうん。そ…そうなんじゃ…。」
かなり深みのある表情でうなずかれる。
「も、もう血抜きも終った頃なのじゃ。さ…さあ行くのじゃ。」
「は、はぁ。」
何か強引に話題を変えられたような気が…。まあいいか。
それから30分ぐらい、そろそろ時計の針が午後6時を指す頃に、シェーラの村の入り口と思われる木の柵の前までたどりついた。
「あ。村長。ちっす。」
村に入ろうとした所で誰かに声をかけられる。声の方に振り向くと、見事なモヒカンで上半身裸に毛皮のベストを羽織った、細見だが引き締まった体をしたエルフの青年が立っていた。
いかん。目を合わせたらいけない系の男だ。…ん? 村長って言った?。
「おう。モヒードもご苦労なのじゃ。」
右手をシュタっと上げて答える村長。
「お。やった。GKじゃないっすか。今夜はごちそうっすね。」
「ふっふっふ。皆を広場に集めるのじゃ。今から肉を分けるのじゃ。」
「了解っす。じゃあ。ひとっ走りいってくるっす。」
と、モヒカンは右手をシュタっと上げ、満面の笑顔で走り去っていった。
「ヒャッハー! 皆! 今夜は肉だぜー! それもGKだぜー!。」
「村長? モヒカン?。」
と、シェーラを指差した後、走り去って行った目を合わせたらいけない系の青年を指差す。
「村長さんなのじゃ。」
自分を指差してふんすと鼻息荒く頷く村長さん。そして。
「もひかん? あの髪のことなのか? あの髪の事なら、あれは狩人の証なのじゃ。」
ふうん。あれは、狩人の証で、この娘が村長ね。…さすが異世界。
「何か言いたそうな顔なのじゃ。儂はこれでも1200年ぐらい生きてるのじゃ。この村では一番の古株なのじゃ。じゃから村長でいいのじゃ。」
はあ。年功序列なんですねって…んん!?? 1200歳って事か!? ああ~…そう…です…か。驚きませんよ。ええ。ファンタジーですもの。
「さあ、儂らも広場に急ぐのじゃ!。」
「はあ。」
気の抜けた返事をした私と村長は、村の広場を目指して歩き始めた。
村の広場にたどり着くと、中央の噴水の前には、まだ先ほどnモヒカンしかいない。まだ皆さん集まっていない様子。
「あ。村長。もうみんなもうすぐ集まってくるっス。」
入り口で会ったモヒカンが、声をかけてくる。
「わかったのじゃ~。」
そうそう。我々がどうやって、でかい豚一頭分はある GKをここまで持ってこられたかと言えば、当然、村長であるシェーラが、魔法で浮かせて押してきたのである。しかし。私、完全にスルーされているな。モヒカンもこちらをまったく気にしている様子もないし。
「そんで。村長。こいつ誰っすか?。」
今更!?。
「ん? 儂の客人なのじゃ。今日は儂の家にお泊りなのじゃ。」
簡潔に答える村長。
「わかったっす。」
簡潔な答えに簡潔に返すモヒカン。
「え? ああ。泊めてくれるんですね。良かった。これから帰れとか言われたら、本当どうしようかと思いましたよ。」
しかし、あのモヒカン本当に興味が無いのね。まあ、実際『興味有ります!』なんて言われても困るだけなのだが。
そうこうしているうちに人…じゃないな。エルフ達が噴水の前にどんどん集まって来る。
60人ぐらいの集落だと聞いていたから、これでほぼ全員じゃないのかな。さて、GKの最初の選択権は我々にある、と言う事らしいからアレを作るために、アレをいただきましょうかね。
噴水は水場も兼ねています。ここでみんな洗い物とかするわけですね。