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死霊術師の人型兵器研究日誌  作者: 梅上
第二章 学園編:下
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15 問題児二人の大発明

 大げさに驚いてみたが、別に意外な人物でも何でもない。ライラとテトラだった。その後ろに恥ずかしそうなカルラと青白い顔をしたグラムがいる。むしろカルロスにはそっちの方が気になった。

 

「おい、大丈夫かグラム。顔色悪いぞ」

「ごめんなさいごめんなさい、止められなくてごめんなさい……」


 何故かカルラが平謝りしていた。そしてグラムは目にも生気が無い。

 

「……誰かグラムを仮眠室で寝かせてやってくれ」


 目の下にくっきりと刻まれた隈はどう見ても寝不足であった。この頃姿を見ないと思ったら何をやっていたのか。

 

「ふ……アッシャーがやられたか」

「三徹如きに負けるとは我ら四天王の面汚しよ、ふあはっははははは」


 テトラとライラはノリノリだった。実に楽しそうである。何時からこいつら四天王になったんだろうと思いながらもカルロスはとりあえず突っ込む。

 

「お前らグラムを殺す気か」


 軽いノリで三徹などさせる物では無い。

 

「まっさかー」


 とライラ。

 

「ぶっちゃけそうなってもいいと思ったかな」


 とテトラ。

 

「止めたんです。止めたんですけど止められなくてごめんなさいいいい」


 とカルラ。

 

 もしかしなくても、全員化粧で隠しているが顔色が悪い上に隈も見える。どうやら四天王とは三徹四人組の事だったらしい。いつも以上に高いライラとテトラのテンションは徹夜明けによる物だったのか。

 

「何をやってたんだよ、お前ら……クレアの手伝いしてるんじゃなかったのか」

「ぶっちゃけあっちは専門的過ぎて何をやっているから分からなかった!」

「くれくれの為に私たちに出来る事は後ろで旗を振って応援する事だけだったのさ……」

「ごめんなさい、役立たずでごめんなさい……」

「誰か。カルラも仮眠室に連れて行ってくれ」


 寝不足からか、只管謝るマシーンと化していたカルラも退場させる。恐らく主犯格である二人が残っていれば話は聞けるだろう。

 

「で、グラムとハーセンの二人を巻き込んで何をやってたんだ?」

「んっふふふ。聞きたいかね、あるにか」

「ただじゃあ教えられないなー」

「おーいケビン。この二人絞め落として仮眠室放り込んで置いてくれない?」


 その言葉に流石に二人も慌てた。ここまで自慢するために来たのに落とされては意味が無いと思ったのだろう。急に早口になって説明を始めた。

 ちなみにケビンは今魔導機士に乗っている。単に脅しの為に言っただけだった。

 

「私たちは考えていたんだよ! 多分その内剣とか足りなくなるだろうなーって」

「だから予め用意しようと考えたんだー」

「でも私たちじゃー前みたいに土から剣を作るしか出来なくてー」

「それを如何に効率的にするかー」

「考えてたらー」

「アッシャーを捕まえてー」

「やめろ交互に喋るな! 訳が分からなくなる!」


 似たような声で似たような口調の二人に交互に喋られるとそれだけで頭がぐらぐらしてくるカルロスだった。オマケに前置きが長い。

 

「簡潔に、一言で! どちらか一人が説明してくれ!」

「魔導機士用の剣を作る魔法道具を作ったよ」

「出来るなら最初からそうしろ! ……何だって?」


 今喋ったのはどっちだったのだろうと思いながらもカルロスはその内容に無視できない内容を聞きとがめた。

 

「だからー」

「魔導機士用のー」


 それはもう良いと冷たく切り捨てる。話が全く進んでいない。

 

「この前創法で魔導機士用の剣を作ったでしょー? それを全部自動でやれるようにしたんだーぐらぐらが」

「材料さえあればあとはオートで同じ規格の剣を作ってくれるようにしたんだー。あの頭でっかちが」

「お前らグラムを酷使しすぎだろう」


 大方上手く煽られて乗せられてしまったのだろうと死体の様に眠っている姿を遠目に見ながらカルロスは推測した。概ね当たっている。

 

「しかし凄いな。その魔法道具を量産できればさっき考えていた問題は大体解決だ」

「正直、業物とは言い難いけどねー。よく分かんないけど」

「人間の騎士だって業物なんて武器を持っているのは一部だからそんなんでいいんだよ」

「あとはそれなりに鉄の量を使うかな。一度作ったら形状を変えるのは難しいから種類ごとに一台作る必要があるね」

「その程度は全然問題ない。むしろ言い換えれば一台毎に品質が安定しているって事だろ」


 一定品質の武具。その調達の手間が省けるの良い事だとカルロスは浮かれた気分になって来た。問題児集団だと思っていたが、いい仕事をしてくれる物だった。

 

「おーい。親分。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「うん? 何だ」

「二号機用に保管してあった資材が消えているんだが、一号機分が足りなくなって流用したのか?」

「いや、そんな事は無い筈だが……随分減ってるな」


 装甲用に用意されていた鋼材と、各部関節用のエーテライトが相当量減っていた。まるで何かの魔法道具を作ったかのような減り方だ。そこではたとカルロスは気付く。あの二人、一体どこから材料を調達したのかと。

 

「持ち出し者の名前は?」

「えっと……ライラ・レギンとテトラ・マークス」


 きっちりと書類だけは整えられていた。魔法道具の試作と言う申請理由。魔導機士の実働が始まってバタバタしていたからだろうか。あっさりと通されて資材は正規の手続きで持ち出されていた。


「おい、お前ら……っていない!」

「親分。嬢ちゃん方二人ならさっき全力ダッシュで仮眠室の方に行きましたぜ」

「……資材の発注をしてくる」


 どっと疲労感が押し寄せてきたカルロスは疲れ切った声でそう言った。仮眠室を覗けばライラもテトラも爆睡していた。寝相にも性格が出る物だとカルロスは思った。流石にたたき起こしてまで文句を言おうとは思えない。

 

 これが勝手に持ち出したなら兎も角、一応正規ルートだ。むしろ碌に確認せずその書類を通した方に問題がある。そして確かな成果を上げているので怒るに怒れない。

 

 やはりあの問題児二人を野放しにしてはいけないと確信する。そしてそれに振り回されたカルラとグラムに深く同情するのだった。

 あの二人ではブレーキ役になりえない。片方は力不足で流されやすく、片方は煽られれば一緒に暴走してしまう。ストッパーになりえる人物……クレアしかいなかった。

 

「クレア……早くそっちの作業を一段落させてくれ」


 魔導炉の作業にかかりきりになっている相棒をこんな風に恋しく思う日が来るとは思っていなかったカルロスだった。

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