魔法講座
「それで、具体的な方法についてなんだが」
クラが泣きやみ、しばらくたった。
「どうすればいいか、とかそういう考えはないのか?」
「ん~、どうすればいいんだろう…ね」
鏡の映した映像を、精確に言えば先ほどの映像はクラの記憶の参照だったのだが、回避するためにはどうすべきか
「いちばんのキーワードは、やっぱ悪魔、だよな」
おそらく事の発端はすべてあの悪魔に起因する。
「あれを倒したら、何とか回避できたり、とかたいかな?」
「それは無理。そもそも私じゃ勝てなかった」
河原でさんざんにやられたことを思い出す。
「あなただったら何とかできるかも、っておもったんだけど…」
「すまん、そもそも自分が何をできるかもわからんのだからな」
悪魔を追い払ったと思われるにゃん丸。
しかし、本当に自分がそれをしたのかさえ定かでない。
どうすればいいか。
いい考えも浮かばずに、狭い部屋の中をうろうろする。
「そういえば、悪魔についての言い伝えとか何かないのか?」
この家にあった大量の本の中になら、一冊ぐらい、そういった本があってもおかしくはない
そうおもったのだが、
「うーん、そもそも悪魔が絶滅したと考えられているのが文字が生まれる前だし、わたしみたいなのはそもそも、生き延びるのも難しかったから」
「わたし、みたいなの?」
「…なんでもない」
「まぁ、じゃななんか。とりあえずは…」
「とりあえずは?」
「腹ごしらえ、だな」
立てかけてあった時計を見ると、その針はちょうど正午を指していた。
「腹が減ってはなんとやら。だろ?」
☆☆☆
「さっき考えたんだけど、やっぱり最初は、にゃん丸、あなたの身体検査だをすべきだとおもうの」
食事を終えて、一心地着いた頃、そう、切り出す。
「身体検査…、なんで?」
「だって、わたしから見たら、あなたが悪魔を追い払ったんだもの。
いちばんの手掛かりになるのはあなただと思うの」
悪魔を何とかするにしても、まず戦力が心もとない。
しかし、にゃん丸なら。
「ふーん、まあ、そうなのかもしれんが。
具体的には何をするんだ?」
「まずは…魔力適性の調査ね。
あの時あなたは確かに魔法を使っていたのだし」
「…あの、これ、なに?」
「私が開発した、魔力測定装置三号、ハカール君」
とても怪しげな機会に座らされ、頭には変なヘルメットをかぶらされたにゃん丸。
クラの手元には大ぶりの豆電球が付いたスイッチらしきものが握られている。
「ちなみに、一号くんと二号くんの測定ちゃんたちはむかし、ご臨終しちゃいまして」
「なんか、すっげー不安なんですけどー」
「安心して、今回はきっと爆発しないから」
「なに、測定ちゃんたち、爆発しちゃったの!?」
一気に不安になるにゃん丸。
しかしそんなものなど一切気にせず、クラは手元のスイッチをぽちっと押す。
「大丈夫、今回はたぶん爆発しないから」
ピッ、ピッ、ピッと、メータが上がっていく。
「結果、でた」
「あ、いがいとはやいし、爆発しなかった…」
「心外」
メータが上がりきると、ハカール君が口らしきところから紙を吐き出す。
「あれ、なにこれ」
「ん、なんか変なのがあったか?」
「魔素のパターンが人間みたい」
「そりゃ、人間ですから」
「それに、適応魔法が…」
「…もしかして、なかったり?」
「いや、ある事にはあるんだけど」
ほら、といって紙を差し出してくる。
「なになに…?変、けい、魔法。…これって珍しいの?」
「まあ、珍しいと言えば珍しいんだけど…」
何か言いよどむクラ。
クラとしては、悪魔を追い払ったのだから、何か特別な物でもあるのかと、そう思っていた。
他の項目、魔力量や純度、粘度などを見てみても、普通の魔術師よりも多い、という程度で特出する項目が皆無だった。
「なんか、期待、はずれ」
☆☆☆
「で、次は何するんだ?」
検査の後、外にでたにゃん丸とクラ。
今は少し家を離れたところの、森の開けたところにいる。
「次は、実際に魔法の練習をしてみる」
「ほう、つまり実践、というわけか」
少し期待を持つにゃん丸。
どうやら、前のセカイでは魔法はないものだったようだ。
「まずは、魔法についてどれだけ知ってる?」
「何にも知らん」
「…じゃあ、まず魔力の通し方から説明するね」
「そう、それで魔力が通ったことになるの」
「…これで?」
地震には全くの変化を見つけられないにゃん丸。
言われた通りしてみたが、本当にこれでいいのか分からない。
「魔力を実際に感じられるようになるには、少し時間がかかるから」
「へー、そんなもんなんだ」
「じゃあ、次は魔力の精製、つまり純度の高いものにするんだけど…」
「純度が高くなるとどうなるんだ?」
「術の効果が高まるの。でも、今回は初めてだからこれは飛ばしていいわ」
「そうか」
「だから、精製を飛ばして、魔力の形成にすすむわ。
にゃん丸は変身系だから、そうね、なりたい自分を想像するの。
そしたら、頭の中で、粘土をこねるようにして、その姿を鮮明に想像するの。
この段階で、大体の魔法の方向性が決まるから後は簡単。
自分の中に流れている魔力を外に出すの。
そしたら、勝手に魔力が魔法になるわ」
「…ふむ、良くわからんがやってみるか。
まずは、なりたい自分か」
まず頭に浮かんだのは人の姿だ。
しかし、そもそも元の自分がどんな顔をしていたかもわからない。
鮮明に、と言われると少し難しそうだと思った。
なにかいいものはないかと周りを見渡してみると、木の枝に止まっていた鳥が目に留まった。
(手始めは、あんなのでいいか)
できるだけ鮮明に雀の姿を覚える。
そして、次に頭の中でそれを再生する。
(これで、どうだ!)
ボワンッ
「あら、それ深美鳥ね。
しかも、なかなかの完成度」
煙がはれる。
にゃん丸がいた場所にいたのは一匹の小さな雀みたいな鳥だった
「これで、うまくいったのか?」
「えぇ、ちゃんと変身してるわよ」
「なんか、あまりやったー!って感じはしないな…」
「それは、ほら、一回目でできちゃったからじゃない?
もう少し時間かかるかなって思ってたもん」
「いわれてみればそうか」
「ま、これで要領は分かったでしょ?」
「だいたいわ」
「じゃ、今度は魔法の解き方ね」
☆☆☆
「しかし、こうして考えてみると、変身の魔法って意外と応用性高いよな」
「まあ、確かに言われてみればそうかもね」
あれからも色々と試してみたにゃん丸。
鳥以外にも、クラが見せてくれたいろいろな動物に簡単に変身することができた。
「でも、ふしぎよね。
人間だけには返信できないってのも」
途中、クラが私に変身してみて、といってみて、にゃん丸も試したものの、なぜかそれだけはできなかった。
物は試し、と他にもいろんな人物画を見せられ、ためしたものの、結局できなかった。
「ま、深く考えても仕方ないだろ。
それよりも、なんかすっげー腹減ってんだけど」
まだ日は高く、昼食を食べてからまだそれほど時間もたっていない。
それなのににゃん丸のおなかはすでに空腹だった。
「あ、それは魔法で体力を使ったからよ。
意外と魔法ってカロリー使うし、魔法使いに太った人はいないといわれるほどなの」
そういって懐からバスケットを出すクラ。
「だから、ここにちゃんとおやつ、持ってきてるわよ」
「おお!」
「はい、これ」
「…なにこれ」
「おやつのキャットフード」
☆☆☆
「今日はもうこれまでにしましょうか」
いつのまにか、あれほど高かった日も、木々の陰に隠れてしまっている。
「まあ、なかなかの成果だったんじゃないか?」
にゃん丸の魔法習得のスピードは速く、すでに簡単な物ならばすぐに変身できるようになった
「そうね。私としてもちょっと意外なほどだったわ。
本当なら、今日はとりあえず魔力の流れが作れればいいっておもってたもの」
そんたことをしゃべりながら家に帰る。
「さって、今日の晩御飯はなーにっかな~」
「もちろんあなたはキャットフードよ?」
「ですよね~」
「あ、ちょっとまって。家に入る前にちゃんと足の裏拭いて」
「あ、そうか。おれ今裸足だったんだ」
「はい、これ」
「ん」
フキフキ
「じゃあとりあえず机で待ってて」
「了解」




