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第四話.出会い

 ルーガの人生大きく変動させた日の翌日は連日の晴天と打って変わり、どんよりと曇っていた。

「おはようございます、母上。」

いつもより少し遅く目覚めたルーガは、身支度を整えて食堂へ向かった。食堂では、母のルネアが一人で食事をしていた。

「おはよう、ルーガ。」

ふんわりとした雰囲気のルネアだが、ヴィルハと結婚する前は王国軍の魔法団に所属していた水の魔法師である。

「お一人ですか?」

食堂を見回してルーガは尋ねる。

「今日は軍の演習があるらしくて、ヴィルハ様もバルドもリネルも朝早く出掛けたの。」

明るい茶色の髪と瞳は兄妹にはなく、見た目はルーガが一番ルネアに似ている。

「今日から旅に出るのでしょう? 元気に楽しんでいらっしゃい。」

昨日のうちに任務のことは知らせてある。

 父親と兄妹に嫌われているルーガは以前から家を出たいと思っていた。このことをルネアに言ったことはなかったが、お見通しだったようである。

「はい、母上もお元気で。」

屋敷の玄関でルネアに見送られ、ルーガは足取り軽く家を出て行った。


 ◆◆◆


 ルーガは昨日指定されたハーリンク城内にある軍の演習場へ行くと、すでに国王グレアムと将軍サーガ・アースレイトが到着していた。

「先程、王国軍の演習に参加するラッシュアッテ自治区の防衛軍が到着した。サーガの娘はその防衛軍の騎士団に所属していたため、一緒に来させたのだ。」

グレアムは準備が行われている演習場を見下ろしながら言った。その演習場ヴィルハとバルド、リネルを見つけてしまい、ルーガは小さくため息をつく。

 しばらくすると、ここへ近づいてくる足音が聞こえてきた。

「陛下、演習の準備が整いました。いつでも始められます。」

それは、連絡のためにやってきたユストだった。



 ◆◆◆


「火よ、燃え上がれ! 波となって焼き尽くせ! 〔火の荒波(あらなみ)〕‼」

「契約に従い、力を現せ! 契約魔法、執行!」


 ラッシュアッテ防衛軍の騎士団が合流して演習が開始され、王国軍の魔法団員たちは次々と自然魔法と契約魔法を発動させている。

「まさか、今日も会えるとは思わなかったな。ユスト。」

グレアムの命令でユストは、一緒に旅をすることになるサーガの娘のところまでルーガを案内している途中である。

「俺もだよ。……昨日も言ったけど、元気でな。」

「ああ、ユストもな。」

騎士団の休憩室の前で最後のあいさつをするとユストは演習合流するため、足早に去っていった。


「さて、どんな人と旅をすることになるんだろうな?」

 独り言をつぶやくと、ルーガは相手がいるという休憩室の扉を開いた。

 扉を開いた途端、正面に座っていた女性がふわりと立ち上がった。それは綺麗な藍色の長い髪に同色の瞳で、ルーガと同じくらいの年齢の美しい女性だった。

「本日付けで特命守護員に任命されたシンシア・アースレイトだ。よろしく。」

シンシアは意思の強そうな声で名乗ると、すらりとした手をルーガに差し出した。

「同じく特命守護員に任命されたルーガ・クローウィンだ。こちらこそ、よろしく。」

相手(なら)ってルーガも名乗り、差し出された手を握る。

 そして、これから二人の旅の生活が始まろうとしていた。

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