葵
次の日、俺は彼女に電話をかけることにした。少し早いような気もしたが、声が聞きたかったし、いてもたってもいられなかったのだ。
発信ボタンを押そうとしたが、胸がドキドキしてうまく話せそうにない。こんな気持ちは初めてだ。
まず話すことを頭で整理しよう。少し落ち着いてから発信ボタンを押した。
なかなか出ない。すると留守番電話サービスのアナウンスになってしまった。
俺は何も入れずに電話を切った。だまされたのか、いやいやそんなはずはない。彼女の方から教えてくれたんだ。
大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせた。
するとすぐに着信があった。彼女だ。
「ほら言ったじゃないか。」
独り言をいいながら電話にでた。
「ごめん出れなくって、電話ありがとう。私も掛けようと思ってたんだ。」
やったーと声を出しそうだった。電話の声も実にかわいかった。
「昨日大丈夫だった?今日は二日酔いじゃない?」
「やだ、そんなに飲んでないわよ。昨日はありがとう。楽しかったね。」
「お礼を言うのはこっちだよ、あんなむさ苦しいメンバーのテーブルに呼んじゃってごめんね。」
「全然」
「それでさ」
二人は同時にしゃべった。
「あっ徹くんからどうぞ」
「うん、あの良かったら今週末にでも会えないかなと思って。就活の話とかもっと聞きたいと思って。」
「私もその話しようと思ったの。」
「良かった。じゃ土曜日はどう?」
「うん。大丈夫。」
「じゃ12時にハチ公前でいい?」
「わかった。じゃあおしゃれしてくね。」
「いいよそんなの。来てくれるだけでいい。」
「えっ」
俺は言った後恥ずかしくなった。
「あっじゃ土曜にね。」
「うんわかった。ありがとう。じゃあね。」
俺はガッツポーズをしてやったーと叫んだ。すごい達成感だ。
その達成感はすぐにドキドキに変わった。次に会う日のことを考えたら、何も手につかなそうだ。
何を着て行こう、どこの店に行こう、何を話そう。何て幸せな悩みなんだろう。
土曜日が来るまで、頭の中はそのことしかなかった。
ついに待ちに待った土曜日がきた。
俺は30分も早く着いてしまったので、近くのレコード店でフラフラしていた。
そこで誰かに肩をたたかれた。振り向くとなんと彼女だった。
「えっどうしたの?」
「早く着きすぎてフラフラしてたの。」
「俺も!。」
二人は恥ずかしそうに笑った。
その日はとても楽しくて、あっという間に時間が過ぎていった。
こんなに話してもまだ足りないくらいだ。
俺たちは次に会う約束をした。最近できた近郊のテーマパークだ。これは立派なデートだろう。
俺はその日に告白しようと決めた。




