表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘の代償  作者: R
6/14

警察

翌朝、いつもと同じ朝が来た。

昨日の夜は布団に入っても、心臓の鼓動がドキドキして眠るどころではなかった。

それでも明け方に少し眠ったようだ。

母はいつものように朝食を用意してくれていた。

「あっ今日は食べる時間ないや、行ってきます。」

「何、まだ時間あるじゃない。昨日も食べてないでしょ!」

母の顔をまともに見られないと思った。


 学校が近づいてくると、様子はいつもと違っていた。

パトカーの回転灯が見えてきた。俺の心臓は激しく鼓動しはじめた。

校門を入ると、パトカーは2台止まっていた。あの駐輪場のあたりに警官と青い作業着を着た人達が3~4人いて何か話しているようだ。鑑識の人達だろう。

俺は顔が強張っているのが自分でもわかった。今日1日自然に振舞えるか自信がなくなってきた。

 教室に入ると案の定みんなその話で大騒ぎになっていた。

「誰か飛び降りたらしいよ」

「えっ誰?何年?」

「わかんない、誰か知らないの?」

そこへ信二が駆け込んできた。

「隣りのクラスのやつに聞いたんだけど、田島だって!」

「え~!あの数学の?」

クラス全員がどよめいた。

「え~何で、自殺?」

「おそらくそうだろうって。遺書があったらしい。」

俺は思わず声を上げそうになった。

「すごい情報だろ?」

信二が自慢げに俺に話しかけてきた。

「あぁ。」

「朝方発見されたらしいぞ。やっぱ自殺だろうな。」

「そうだろうな。」

「何か悩みでもあったのかもな。最近イライラしてる感じだったし。」

「あぁ。」

「何か反応薄いんだけど。」

「今日ちょっと風邪っぽくってさ。」

「そっか大丈夫か。じゃあ今日の部活は休むんだな。」

「あぁそうするよ。」

 ちょうどそこへ担任が入ってきた。

この騒ぎの説明があったが、まだ何もはっきりしていないから、ネットなどで口外しないようにとのことだった。田島の名前は出てこなかった。

その後は自習となった。


休憩時間に俺は直子の教室へ向かった。

「あっ徹、大丈夫?」

「あぁ大丈夫だ。みんな自殺って言ってるな。」

「そんなこと関係ないのよ。警察がどう判断するかなんだから。だぶんはっきりするまで何日かはかかるはずよね。」

「1週間位かな」

「そうね、早く燃やしてくれればいいのに。」

「えっ何を?」

「何をって決まってるでしょ、遺体よ。解剖が終わればすぐに火葬してくれると思うんだけど。」

「あぁ、証拠隠滅だもんな。」

「そうね。うまくいくわよ、きっと。」

「直子、ほんとにごめん。ありがとう。昨日はちゃんと言えてなかったき気がして。」

「そうね、これでかなり私に借りができたわね。これからは何でも言うこと聞いてもらおうかしら。」

「もちろんだよ。」

「やだ、冗談で言ったのよ。じゃあね。」


 直子は昔から決断力も早く、頼もしかったが、今回は本当に直子なしではこの作戦はなかった。

感謝している反面、もしばれたらどうなるのかという思いが頭をかけめぐっていた。


 2日後、田島の通夜が行われた。直子のクラスは全員参列した。翌日の葬式も滞りなく行われたらしい。

1週間後、警察の判断が出た。

田島は飛び降り自殺と断定された。目撃者はいなかったが、やはりポケットの遺書が決め手だったらしい。

あと、田島には300万ほどの借金があった。2年ほど前からギャンブルにはまり闇金に手を出していたそうだ。

それともう1つ、都合の良い要因があった。

田島は直子以外に、もう1人手を出してる生徒がいて、しつこくメールしたり、家の前で待ち伏せしたりとストーカーまがいのことをしていたのだ。何と自分の裸の写真を送っていたそうだ。

その生徒はしばらく先生ということで我慢していたが、とうとう我慢できなくなり、親と学校に言うとたんを切ったのだ。

それが田島が学校から飛び降りたとされる日の3日前だったのだ。その生徒が泣きながら警察に話しをしたそうだ。


これですべてうまくいった。

あとは俺があの日を、あの目を思い出さないように日々を過ごしていけばいいのだ。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ