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魔王様のお嫁様  作者: 紫月 京


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44/56

44.断頭台


目の前に、セレスリーアの処刑場が広がっている。

断頭台へと上らされているのは、お妃様の私室へと襲撃してきた有翼族の戦士十名と、実際にお妃様を抱えて窓から逃げた二名の武官。魔王様が信頼してお妃様付きにしていた護衛官の内の二人で、あの襲撃の日は非番だった。有翼族がジフジ様に蹴散らされている間に窓から入り、見知った顔に油断したお妃様を抱え上げてサヴィーナ老の屋敷へ連れ去ったのだ。

有翼派閥の手が城の奥深くにまで入り込んでいたことを憂慮したアイルーン様が、現在すべての種族に対して綿密な調査を行っている。

サヴィーナ老の企みは、大方事前の推測通りだった。

愛娘を魔王様の王妃に据え、外戚として権力を振るう。ハミリア嬢を小さい翼と蔑んだ者たちを、さらに強大な力で押さえつけ、ハミリア嬢に絶対的な服従を迫るつもりだったらしい。

令嬢の方はもっと馬鹿だった。

女性だからと女武官を尋問に当たらせたせいか、何を勘違いしたのか自分は優遇されていると思い込み、形ばかりの取り調べなどさっさと終わらせて魔王陛下に会わせろと言い放ったらしい。頭が痛くなった。

お妃様を攫ったことについても、初めは認めなかった。

ただお茶会に呼んだだけだと、自分の分を弁えて国に帰るように説得してあげただけだと、拙い言い訳を繰り返していた。

女性のお茶会で暴力を振るうのか、有翼族は野蛮だなと魔王様に底冷えのするような声で言われて、琥珀色の瞳を見開いていた。人族のお妃様に、セレスリーアの主力種族である自分が暴行を加えることの何が問題なのか、さっぱり理解していなかった。


国民の見ている前の断頭台で処刑するには高位すぎると判断されたため、地下牢に移されたハミリア嬢はいまだ元気に騒いでいるけど、魔王様が許すはずはない。

それに、ミサキ様が目覚める前に殺してしまうのも、躊躇われている。心優しいミサキ様は許してしまいそうでさっさと処分してしまいたいようだけど、自分の知らない内に処刑が終わっているのもミサキ様が傷つきそうで不安らしい。

ジフジ様に付き纏っていた麝香族の男の死骸は、指示された掃除夫が焼却炉で燃やし終わっている。

それでも怒りの収まらないカイダル様を、ジフジ様が苦笑しながら宥めていた。

チラリと魔王城の最上階を振り返る。外から見れば高く聳えている広大な城は、魔王様の抑えきれない怒りを表しているようで、薄暗い雲と相まって禍々しい。ミサキ様がおいでの時には明るく輝いて見えたのにな。

処刑人が罪人たちの処刑の理由を読み上げ始めた。

観覧席に座る魔王様とカイダル様は無表情で聞いている。

「ここに捕らえられている者どもは、偉大なる魔王陛下の唯一の妃にして人族の王国から和平の証として嫁いで来られた王妃殿下を拐かし、口にするのも悍ましい拷問を行った者どもである。

 我ら魔族は誇り高き種族である。他種族を見下し、あまつさえ暴行を加えるなど、許されざる暴挙である。偉大なる魔王陛下の御名のもと、ここに刑を執行することを宣言する」

今から処刑されるのは、ミサキ様に実際に暴行を加えた者たちではない。上から指示され、ミサキ様を魔王城から攫った実行犯だ。けれど、見せしめの意味を込めてここで処刑されることに決まった。

知らされた罪状にどよめく民衆の声に、後ろ手に縛られた男たちが肩を震わせる。

一人ずつ、背中を蹴られながら順番に断頭台の前まで歩かされている。

涙を流して許しを請う者もいるな。穢らわしい。お前が王妃殿下などと、あの方のことを呼ぶな。

ダメだ、僕は冷静に仕事を熟す侍従でいたいんだ。ミサキ様が来られてから、感情を揺さぶられることが増えたような気がする。


最後の一人の首が落とされた後、魔王様が立ち上がって言葉を発された。

「皆、しっかり見届けたな。ユーティリアは俺の最愛の王妃だ。今後も、手を出そうなどという不遜なことを考える者はこうなる。二度と、人族だなどと見下すな」

決して大声を出されたわけではない。

それでも、沸き立っていた民を静まり返らせるには十分だった。

理解の色を民衆の表情の中に見たのか、満足げに頷いて魔王様がその場を後にした。



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