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魔王様のお嫁様  作者: 紫月 京


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37.波乱の御前会議


セレスリーアの重臣たちが城に集まってきた。

御前会議が行われるのは、広大な魔王城の三階にある大会議室だ。駆り出されたカフカがお茶の支度に走り回っている。

文官たちが議事録の用意をしていた。最重要の議題は攫われたお妃様の居場所だから、議事録は無駄になるかもしれない。けど、急な開催に慌てふためいている文官たちに告げるのも気の毒だ。

魔王様の腹の底の怒りを示すように、天気が荒れだしている。重く暗い雲が空を覆う様子を窓から眺めて、ため息を漏らした。雷鳴も、遠くの山から轟いてきそうだ。


広い大会議室に、重臣たちが次々に腰を下ろす。現在セレスリーアに滞在している二十名の重臣が、すべて揃った。一番最後に入って来た有翼族のサヴィーナ老がゆったりと椅子に腰掛けたところで、魔王様がカイダル様を伴って大会議室に入った。

重臣たちが立ち上がり、一斉に頭を垂れた。

小さく頷いて、魔王様が一番奥の席に座る。その後ろを守るように、側近であるカイダル様が立った。

座り直した重臣たちを見回して、アイルーン様が口を開く。

「此度は、急な招集にお応えいただき感謝致します。魔王陛下より、緊急の御前会議を命じられましたので、議事録に不備などあるかもしれませぬが、お許しいただきたい」

会議の始まりを宣言したアイルーン様に、財務を預かる老臣が片手を上げた。

「それで、総務官長どの。一体何事でしょうか。新たな王妃殿下のお披露目についてでしたら、予算のこともありますので早めに教えていただきたい」

おぉ、いきなりお妃様の名前が出た。あ、サヴィーナ老の眉が上がったな。反応しないように、内心は隠すかと思っていたけど。

大会議室の扉横に控えて、会議の様子を見守る。

「お披露目に関しましては、また次の機会に。まずは、近頃この魔王城で不穏な動きがあることについて、皆様のご意見をお聞きしたいと思います」

「不穏な動き?どのような」

別の声が上がる。

「謀反の疑いあり、と」

アイルーン様の端的な言葉に場がどよめいた。

「そんな馬鹿なことがっ」

「まさか、そのような」

「そもそも、それは真実性のあるお話なのでしょうな!」

次々に上がる悲鳴のような怒号にも、魔王様は口を開かない。サヴィーナ老も押し黙ったままだ。

すっと手を上げて、アイルーン様が場を静めた。

「皆様、静粛に。確かな筋からの情報です。それで、皆様の心当たりや怪しい動きを見聞きしたお話などをお聞きしたいのです」

ふん、と鼻を鳴らしたサヴィーナ老に、視線が集まる。

「くだらん。そんなことのために、忙しい儂らが呼び出されたというのか。魔王陛下に忠誠を誓って幾百年。我が一族は疑われ続けておるが、よもや此度、儂らを謀反人と決めつけての愚行ではあるまいな」

「ならばお聞きします、サヴィーナ老。近頃、ご息女が城の秩序を乱しておいでなのをご存知ですかな」

アイルーン様の冷静な問いかけに、サヴィーナ老の眉間に皺が寄った。

「娘が秩序を乱している?くだらん言いがかりはよしてもらおう、総務官長どの」

「皆様にもお尋ねします。この魔王城で、最上階は魔王陛下と王妃殿下のための居住区です。そして、許可された者しか立ち入ることはできない。ご存知ですな」

アイルーン様の問いかけに、何を今更といった表情で皆が頷いた。

「ですがこのところ、有翼族の若い娘が三人、許可もなく最上階に入り込んでいるという情報がございます」

再び場がざわめきで満ちる。それは、魔王様のお怒りに触れて、その場で殺されても文句の言えない愚行だから。

「有翼族の娘?それが我が娘だと言うのか?」

低い声で尋ねたサヴィーナ老に、アイルーン様が重々しく頷いた。

「左様です。陛下からもカイダル様からも、側仕えの者からもそのような報告が上がっています」

「そうだとして、これまで娘は無事に過ごしておる。陛下が内心許可されておいでということでは?」

何て恐ろしいことを言うんだ、この老人は。あぁ、魔王様の顔から表情がすべて消え去ってしまったな。

「正式な許可がないことが問題です。陛下が許可されていないのに最上階に潜り込み、あまつさえ、王妃殿下に暴言を吐くなど許されることではございません」

アイルーン様の言葉に、サヴィーナ老が初めて表情を崩した。

ニヤリ、と厭らしい嗤いを浮かべるその様子は、傲慢娘にそっくりだった。

「いまだ蜜月も迎えられぬ下賤な人族など、陛下には釣り合わぬ。些細な小言程度で、大げさなことよ」

「……ほぉ」

低い、低い声が奥の席から響いた。

ピシリ、と大会議室の柱にヒビが走ったことを、一体何人が気づいただろうか。



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