表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様のお嫁様  作者: 紫月 京


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/42

25.ジフジ様の激励


お妃様の介抱をするというジフジ様を私室に残して、魔王様とカイダル様は再び禁書庫へと向かわれた。

僕はカフカを呼んで、お妃様に果実水を運ばせる。今日も執務は無理そうだな。そろそろ、仕事を押し付けられている文官たちが発狂するかもしれない。財政官に特別手当の予算を組んでもらえるか、相談してみよう。

ソファで、まだぐったりとしているお妃様の手を、ジフジ様が優しく握っている。

「大丈夫かい?」

「……ジフジちゃん……まぞくって、すごいのねぇ」

とろんとした瞳で、お妃様が呟いた。

「陛下は魔族の中でも最強だ。凄いに決まってるさ。翻弄されたかい?」

ハッとしたように目を見開き、お妃様がガバリと身を起こす。

「そう!そうなのよ!あんなの、あたし初めてよっ」

「あんなの?」

聞き返されて我に返ったのか、途端に赤くなるお妃様。

「いえっ、そうね、そう。何も……何もないわよ!?」

「そんな真っ赤な顔してそんなこと言われてもねぇ」

クスクス笑うジフジ様に、お妃様が涙目を向けた。

「そんなに可愛く睨みつけたって、怖くも何ともないね」

よしよしとでも言うように、ジフジ様がお妃様の髪を撫でている。

「だけど、でも……ダメよ。あたしの中にユーティリアちゃんがいるって言うなら、なおさらよ……」

「陛下に惚れたかい?」

「っ!!」

瞳が零れ落ちそうなほど見開いて、弱く首を横に振るお妃様を、ジフジ様がじっと見つめている。

「だって……ダメでしょ?あたしは、ユーティリアちゃんじゃなくて……ここは、ユーティリアちゃんの居場所で……あたしだって、夫と子供が……」

「ミサキ。前にも言ったね?今この場所で、陛下と過ごしてるのはあんたなんだって。ユーティリア様じゃない」

視線を落として、お妃様は首を振り続けている。

「あたし……怖い」

「何が怖い?」

「ここに、ずっといたくなるのが、怖い……」

堪えきれなかったように頬へ零れた涙を、ジフジ様がそっと指で拭う。

「いたければ、いればいい。陛下も許すだろうさ」

「ダメよ……許されない」

「誰が許さない?」

「……」

ジフジ様が、お妃様の心の問題だと言っていた意味がわかるような気がした。お妃様は、きっとずっと、葛藤し続けているんだ。

セレスリーアで、魔王様の傍にいたい。けれど、ユーティリア様の体でそれは、許されないと思っている。

僕たちが、どれだけここにいていいと言ったって、お妃様が自分で納得されないといけないことなんだ。

静かに、ジフジ様が口を開いた。

「ユーティリア様は、逃げたんだ」

ハッとしてお妃様が勢いよく顔を上げた。

「ジフジちゃん……?」

「そうだろう?そりゃあ、国元で酷い扱いを受けていたのかもしれない。新天地に希望を見出すこともなく、もう生きていたくないと願って、あんたの魂を引き寄せた」

ふんと鼻を鳴らして、ジフジ様は続ける。

「人族にとって、あたしら魔族は恐ろしい嫌悪すべき対象なんだ。実際、ユーティリア様が魔族をどう思ってたかなんてわからない。会ってないからね。あたしたちが出会ったのは、あんたなんだよ、ミサキ」

厳しいことを言っているようでも、ジフジ様の声には優しさが滲んでいた。

「陛下の人となりを見もせずに、あたしたち魔族と関わりもせずに、ユーティリア様は逃げ出したんだ。あんたにすべて押し付けて。身勝手だよ」

お妃様の手を握るジフジ様の手に力が込もっていくようだ。折らないでくださいね……。

「そんなことないっ」

勢いよく頭を振って、お妃様が叫んだ。

「ミサキ?」

「あたし、あたしっ、会ったもの!ユーティリアちゃんに、会ったのよ」

「魂の入れ替えの時かい?」

ジフジ様の冷静な問いに、緩く首を縦に振るお妃様は、眉間に皺を刻んでいた。

「あんなに、何もかもを諦めたような、もうこれ以上生きていたくないような顔、見てるこっちが辛くなるくらいだった」

「何か言ってたかい?会話できた?」

「何も……」

悲しそうにお妃様が目を伏せた。

はあっ、と息を吐いて、ジフジ様がお妃様の細い体を抱き寄せた。

「っ、ジフジちゃん!?」

「あんたもユーティリア様も、我慢し過ぎだよ。もっと、自分の欲望に忠実に生きな」

ジフジ様の腕の中で、お妃様が目を丸くしている。口もぽかんと開いたままだ。

「陛下は、そんなに頼りないかい?あたしや、カイダルは?」

「……っ、頼りにしてるっ。貴方たちがいてくれて、あたしがどれだけ救われてるかっ」

「なら、信じな。あんたの望みを叶えようと、陛下だってあたしだって、カイダルもリカルも、ちゃんと力を尽くす。だから、願いは隠さずに、ちゃんと言うんだ」

そっと腕の拘束を解いて、ジフジ様がお妃様の頬を両手で包んで視線を上げさせた。

「泣きたい時は泣く。望みがあるならちゃんと口にする。我慢するな」

みるみる瞳に溜まった涙が、再びお妃様の頬を流れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ