木枯らしイチゴう
「あれ、イチゴが入ってる。ん、でもイチゴの旬って春じゃない?」
「実は、うちの実家がイチゴ農家でさ。それもハウスで育ててるからか、促成栽培で今の時期にも食べられるんだよね」
「へー、美香ちゃん家のイチゴなんだ。冬でも甘いの?」
「春ほどじゃないけど、食べられるくらいには甘いよ」
「良いなぁ〜」
ある日の昼休みの教室。
先日期末テストが終わってみんなの緊張感も解け、和やかな空気が漂っているのが気持ちが良い。
「俺の前でイチゴの話するなって……」
「あっ、ふふ、ごめんね」
眠そうな表情で静かに突っ込んだのは隣の席の佐藤市吾くん。
自己紹介でも、果物のイチゴと同じ名前だけどイントネーションは違う、だなんて言っていたのが印象深く残っている。
「クリスマスケーキの時期に間に合うように生産してるとかか?」
「う、うん。多分そうだと思う!」
そんな私、美香は、少しやんちゃだけど優しい彼に、思いを寄せている。
放課後――
足早に校門を出ようとしたその時、後ろから名前を呼ばれた。
ブレザーだけを羽織って「あ〜寒っ」と言いながらやって来たのは、市吾くんだった。
「よっ。明日小テストもあるし古典のワークの提出もあるよね? どれくらいやった?」
「全然進まない……。早く帰って取り組まなくちゃだね」
「ところでさ、唐突で申し訳ないんだけど、実は、美香の所のイチゴを一口いただきたくてさ、ダメかな?」
何気ない会話の中で突然彼が放った言葉は、私の中で全く予想していないものであった。
ついさっき、イチゴの話をするなと言っていたのに。
好きな人にお願いされると上手く言葉が出なくなる。それに呼応するように、私の鼓動は益々早くなる。
「こ、今度持って来よっか? 私の弁当に入ってたくらいだし、まだ家にあると思う」
「本当に? 昼の弁当に、デザートとしてイチゴを足して食べられたらいいなって思ってたんだよ」
「話をするな、って言いながら、本当は羨ましかったんだね」
「うっ……うん」
どうやら図星だったようで、びくっとしながら顔を赤らめて視線を逸らす仕草が可愛らしくて、思わず吹き出してしまった。
彼も笑ってくれたのが、何より嬉しかった。
翌日――
「はい、これ。時期尚早イチゴだけど、美味しく食べてね」
「ありがと! でもその発音だと俺の名前と一緒だよ!」
小さく笑いながら風のように鋭く突っ込む彼を、今までもこれからも、ずっと私は好いている。
これは私の、イチゴのように甘酸っぱい恋だ。




