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なろうラジオ大賞7

木枯らしイチゴう

作者: 透明スケ

「あれ、イチゴが入ってる。ん、でもイチゴの旬って春じゃない?」

「実は、うちの実家がイチゴ農家でさ。それもハウスで育ててるからか、促成栽培で今の時期にも食べられるんだよね」

「へー、美香(みか)ちゃん()のイチゴなんだ。冬でも甘いの?」

「春ほどじゃないけど、食べられるくらいには甘いよ」

「良いなぁ〜」


 ある日の昼休みの教室。

 先日期末テストが終わってみんなの緊張感も(ほど)け、(なご)やかな空気が漂っているのが気持ちが良い。


「俺の前でイチゴの話するなって……」

「あっ、ふふ、ごめんね」


 眠そうな表情で静かに突っ込んだのは隣の席の佐藤(さとう)市吾(いちご)くん。

 自己紹介でも、果物のイチゴと同じ名前だけどイントネーションは違う、だなんて言っていたのが印象深く残っている。


「クリスマスケーキの時期に間に合うように生産してるとかか?」

「う、うん。多分そうだと思う!」


 そんな私、美香(みか)は、少しやんちゃだけど優しい彼に、思いを寄せている。

 


 放課後――


 足早に校門を出ようとしたその時、後ろから名前を呼ばれた。

 ブレザーだけを羽織(はお)って「あ〜寒っ」と言いながらやって来たのは、市吾くんだった。


「よっ。明日小テストもあるし古典のワークの提出もあるよね? どれくらいやった?」

「全然進まない……。早く帰って取り組まなくちゃだね」


「ところでさ、唐突で申し訳ないんだけど、実は、美香の所のイチゴを一口(ひとくち)いただきたくてさ、ダメかな?」


 何気ない会話の中で突然彼が放った言葉は、私の中で全く予想していないものであった。

 ついさっき、イチゴの話をするなと言っていたのに。

 好きな人にお願いされると上手く言葉が出なくなる。それに呼応するように、私の鼓動は益々早くなる。


「こ、今度持って来よっか? 私の弁当に入ってたくらいだし、まだ家にあると思う」

「本当に? 昼の弁当に、デザートとしてイチゴを足して食べられたらいいなって思ってたんだよ」

「話をするな、って言いながら、本当は羨ましかったんだね」

「うっ……うん」


 どうやら図星だったようで、びくっとしながら顔を赤らめて視線を逸らす仕草が可愛らしくて、思わず吹き出してしまった。

 彼も笑ってくれたのが、何より嬉しかった。



 翌日――


「はい、これ。時期(じき)尚早(しょうそう)イチゴだけど、美味しく食べてね」

「ありがと! でもその発音だと俺の名前と一緒だよ!」


 小さく笑いながら風のように鋭く突っ込む彼を、今までもこれからも、ずっと私は好いている。


 これは私の、イチゴのように甘酸っぱい恋だ。

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