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『悪役令嬢、最強魔導師として無双します』〜追放されたけどチートスキルで王国も恋もぜんぶ救ってみせますわ〜  作者: のびろう。
第2章『王都へ、反撃のドレスアップ!』

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魔導大会と、再会の剣

王都に潜入して三日。

わたくしとセリアは、ひたすらに情報を集め続けていた。


街角の噂、酒場の会話、流通の変化。

あらゆる断片が、ある一つの場所に結びついていた。


――王立魔導大会。


魔導学院主催、貴族も平民も問わず、実力ある魔導師たちが腕を競う“表の舞台”。

だが裏では、貴族の勢力争いや、魔導技術の売買交渉の温床でもある。


「出るわよ、セリア」


「えっ!? リディアが!? 本当に!?」


「出ない理由があるかしら?

 むしろ、“派手に目立って情報を引き出す”には最適じゃない?」


「えっと……身分、バレないかな?」


「“変装した伝説の旅魔導師”って設定でいきますわ。あとでサイン書くわよ?」


「えええ、完全に別ジャンルのスター化してる……!」


そう。

バレなければいいのよ。バレなければ。


……ええ、でも“バレてしまう可能性”が一人だけいるのよね。


彼――

ルーファス・カインズ。


わたくしの元婚約者であり、王国最強と名高い若き騎士団副団長。


──そして、わたくしを断罪の場で“見送った人”。


「会いたくないわけじゃ、ないのよ。ただ……」


会ったとき、わたくしの中の“なにか”が、また揺らいでしまいそうで――



大会当日。

わたくしは、仮名でエントリーしていた。


名を――「リディ」。


うん、まさかバレないでしょう(皮肉)。


観客席はすでに満席。

セリアは客席中央の“貴族区域”で、こっそり情報収集中。

わたくしは選手控えエリアで、魔導師たちの視線を適度に受け流していた。


「リディ選手、第三試合です。ご準備を」


「ええ、いつでも」


マントを翻し、立ち上がる。


剣ではない。わたくしの武器は魔導。


けれど、舞台に上がれば、魔導もまた剣となる。



そして。

第六試合、決勝トーナメント第一枠。


アナウンスが響いた。


『次の対戦は――』


『“リディ” 対 “ルーファス・カインズ”』


時が、止まった。


鼓動が、一拍、飛んだ。


──ええ、まさかこのタイミングで“くる”なんて。


会場がざわめく中、遠くの通路から彼が現れた。


黒い騎士服、冷たいまでに整った横顔。

変わらない。

けれど、その瞳はどこか……痛みを湛えていた。


「…………」


「…………」


言葉はなかった。


けれど、見つめ合っただけで、心の奥に“あの日”が蘇った。


──大広間での断罪。

──彼の目は、ただ、冷たく。


いや。


違う。


ほんの一瞬、あのときの彼は……“何か”を飲み込んでいた。

その真実が、わたくしをいま、刺す。



「始め!」


合図と同時に、空気が張り詰めた。


ルーファスの剣が抜かれる音すら聞こえないほど、観客が息を呑んでいる。


一閃。


視界を断ち切るような踏み込み。

その剣撃は美しかった。まるで“流星”。


でも。


「解析、展開――《螺旋盾・双層》」


わたくしの魔導は、それを“受け止めた”。


「……やっぱり」


彼が、呟いた。


「君だったんだな」


「……ええ、残念ね。“変装”が効かなかったなんて」


「……変装、というより……俺が、君を忘れられなかっただけだ」


「…………っ」


不意打ちのように響いたその言葉に、心が揺れた。


でも、今は戦いの場。


「続けるわよ、ルーファス。

 わたくし、今のわたくしを、“あなたに見せたい”の」


「……ああ。なら、俺も応える。剣で――心で」



空間を裂くような、剣と魔導の交差。

ルーファスの剣術は、“護る”ための型。

わたくしの魔導は、“貫く”ための型。


だけど、その根底にある想いは――同じだった。


「……あなたは、なぜ、何も言わなかったの?」


「俺には……君を守れる資格がなかった」


「それでも、あのとき! 一言だけでも、あったら……!」


「許してくれとは、言わない。でも――今なら言える」


ルーファスが、剣を下ろした。


「リディア。俺は、君を……忘れたことなんてなかった」


「…………っ」


涙は、こぼれなかった。


でも、胸の奥がふるえて、声にならなかった。


審判が、勝敗を告げる。


『勝者――リディ!』


観客が沸き立つ中、

わたくしと彼は、微かに頷き合った。


剣では決着がついたけれど。

心の答えは、まだ――これから。



控室に戻ったわたくしを、セリアが出迎える。


「おつかれさま! リディア、すごかったよ……!」


「ふふっ、当然でしょ?」


「でも、ちょっと赤くなってるよ? 顔」


「……湯気よ、湯気」


「え? お風呂あったのここ?」


「気持ちの話ですわ!!」


セリアが笑った。

でもその目の奥は、少しだけ寂しげで、温かかった。


「リディア。……ルーファスのこと、まだ――」


「……それは、いまは考えないわ」


わたくしは胸元を軽く握った。


「だって、まだ“仮面の王子”と出会ってないもの」


セリアがぴくっと反応する。


「まさか……仮面舞踏会、行くつもり?」


「もちろん。“悪役令嬢の仮面舞踏会”、楽しそうじゃない?」


「またフラグ立ててる……!」


でも。


乙女ゲームは選択肢で分岐する。


そしてわたくしは今、自分の選択で、未来を変えているのだから。


――次のステージへ。


仮面が交錯し、真実が舞う――


“舞踏会”の夜が、近づいている。

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