表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢、最強魔導師として無双します』〜追放されたけどチートスキルで王国も恋もぜんぶ救ってみせますわ〜  作者: のびろう。
第5章『闇より目覚めし王に挑む』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/30

最後の守り、そして決意

「……来ます」


わたくしは、地平線の先――夜空を割く黒い光に、息をのんだ。


王都を見下ろす“聖騎士の丘”。

そこに集ったのは、わたくしたちを含むたった七十名の精鋭。


対する敵の数、三万以上。

しかもその大半は、精霊を喰らって強化された“黒精霊兵”。


「やれやれ、ここまで派手にやられると、ぼくの出番はないかと思ったよ」


アレンの声。

その優雅な白銀の髪は、夜でもなお、月のように揺れている。


「王子殿下、ご自分の立場をお忘れですか?」


「いやだなあリディア嬢。こんな夜に、“王子”だなんて色気がない」


「……ふざけてる場合ではありませんわよ」


「だからこそ、ふざけるんだよ。震える心をごまかすには、それが一番だ」


わたくしは、彼の“仮面の奥の目”を見つめた。


――怯えている。でも、逃げない。

その強さが、ほんの少しだけ羨ましかった。


「……精霊結界は、わたくしが張ります。セリア、後衛指揮を」


「うん、任せて! でも、リディア……無理はしないでね?」


「無理は、もうとうに始まってますわ。いまさら気にしても仕方がないでしょう?」


セリアの笑顔が、ほんの少し曇った。


「だからこそ、そういう言い方しないで……怖くなるよ」


「……ごめんなさい。わたくし、少し強がりました」


セリアの手を、そっと握り返す。


「でもね、セリア。もう“逃げる場所”はありませんのよ。ここで守れなければ、王都も、わたくしたちの未来も……全部、奪われる」


「……うん。分かってる」


わたくしは、丘の中央で詠唱を始めた。


「《アルカ・コード展開――精霊結界:ティル=ファリア》」


紅霞の魔法陣が、わたくしを中心に展開する。

その輝きは、夜の帳すら切り裂くように――王都全域を包み込む。


「この結界がある限り、黒精霊兵は街には入れません」


「ただし……この丘を突破されれば、それも終わりってことか」


ルーファスが、傷ついた体で剣を構えながら言う。


「お前の魔力が尽きるか、俺たちが全滅するか。勝負はそこだな」


「……ええ。その通りですわ」


わたくしは、ただ祈るように――


「お願い、どうか耐えて……」


風が鳴く。

鼓動が重なる。


そして――


「来たぞッ!!」


黒の軍勢が、闇を裂いて突進してきた。


「全員、配置につけッ!! 第一陣、剣士隊・魔導弓兵、撃て!!」


ルーファスの声が響く。


セリアの光矢が、嵐のように降り注ぐ。

アレンが、銀の魔剣で一気に前線を切り裂く。


「この程度で、ぼくの登場が霞んじゃうのは困るな――行こうか、“仮面の王子”として!」


彼は優雅に笑いながら、敵の将に突撃していった。


「……なんて人なのかしら」


けれど、わたくしは、それを誇らしく思った。


ルーファスも、すでに前線で傷だらけになりながら戦っていた。

彼の剣が通らなくなってきている。

相手の“強化”が進んでいるのだ。


「……皆、限界が近い」


魔力が、喉奥から血の味を伴って漏れ出す。


(ダメ……せめて、あと少しだけ)


そのとき――精霊結界が軋んだ。


「ッ……!? まさか、あの魔王が……!」


「リディア! やばい、来るッ!」


セリアの叫びと同時に、空が砕けた。


“そこ”にいたのは、巨大な黒の鎧――否、“闇そのもの”。


《――リディア・アルヴェイン。汝の名と魂、ここに問い質す》


「……わたくしの名を知っている?」


《かつて我が核を拒みし、“光の因子”の継承者。

貴様の心こそが、最も甘き“闇の供物”》


――わたくしを、喰らいに来た。


「……それなら、」


静かに、剣を抜いた。


「喰らわせて差し上げますわ。わたくしの、“誓い”と“意志”を――ッ!!」


精霊の輪が、再びわたくしを包んだ。


「《コード・イマージュ:祈光剣〈リュミナス・ノワール〉展開――!》」


七色に輝く剣が、空を斬り裂いた。


「ルーファス、もう一度だけ、力を貸して!」


「おう。死んでも守ると、誓ったからな」


「セリア!」


「任せて! 最後まで、みんなで一緒だよ!」


――そしてわたくしたちは、絶望の王に挑んだ。


* * *


「リディア、来るぞ――ッ!」


ルーファスの怒声とともに、大地が砕けた。


闇の王――その姿はもはや“人”ではなかった。

全身を黒き瘴気に包み、六本の腕からは黒曜石のような刃が伸びる。

その周囲を漂う影には、精霊たちすら近づけない。


「こちらの魔力を……喰ってる!?」


「そうだよ。あれは“奪う王”――存在するだけで、周囲の魔力と命を浸食していく。下手に攻撃したら逆に……!」


アレンの言葉が終わる前に、闇の王が咆哮した。


「《■■■■――■……ッ!!》」


音にならない声が響いた瞬間、

空気が――世界が、悲鳴を上げる。


「ッ、これは――!!」


セリアが、わたくしの隣で蹲る。


「セリア!? どうしたの……!」


「頭が……声が……直接、心に響いて……“生きてる意味”を……」


「聞かないで!意識を切って!」


わたくしは急いで《沈黙の加護》を展開し、セリアを守る。


けれど、魔王の“精神侵蝕”はその上からも押し寄せてきた。


ルーファスが、無言で斬り込む。

その一太刀は、確かに魔王の腕を捉えた。


だが――


「ぐあああああッ!!」


返しの一撃で、彼は吹き飛ばされた。

数メートル先の岩に叩きつけられ、剣を落とす。


「ルーファス……ッ!」


わたくしは駆け寄ろうとしたが、魔王がそれを許さない。


「動くな、って……言ってるでしょうが」


アレンの声が、横から滑り込む。


銀の魔剣が風のように躍り、魔王の刃を弾く。

だが、彼の額にもすでに裂傷が走っていた。


「ったく、強すぎるってばさ……! まったく、ヒロインを泣かせる奴は嫌いなんだよ、ぼく」


「……アレン、あなた……」


「言ったでしょう? 泣きたくなるから、ふざけてるって」


それでも彼の瞳は、真剣だった。


「セリア、起きて。お願い、まだ終われないから!」


「……っ、だいじょうぶ、わたし……行ける……!」


セリアが震える手で立ち上がる。

けれど、その足元は明らかにふらついていた。


「あなたは、もう休んで――!」


「やだ……! わたしも、戦う……! リディアと一緒にいるって、約束したの!」


その言葉に、わたくしは――震えた。


「セリア……ありがとう。あなたの想い、受け取ります」


わたくしは手を掲げる。


「《アルカ・コード接続――精霊連携・三位一体陣、展開!》」


この魔王に、単発の攻撃では意味がない。

奪われる前に、全てを“超える”しかない。


「アレン!セリア! 今こそ合わせて!!」


「了解!」


「いける……!」


三人の力が重なる。


風、光、魔法の三属性が編み込まれた魔法陣が、地に咲いた花のように展開する。


「《三重奏式・連撃術式――星彩舞刃〈ステラ・ヴァルシオン〉》ッ!!」


閃光。


それは、世界が輝きに包まれる一瞬だった。


魔王の身体が灼かれ、黒き腕が飛び散る。


だが――


「ク……ぁぁあアアアアアアッ!!」


次の瞬間、魔王の“本質”が暴れ出した。


闇は暴走し、空を裂き、大地を喰らう。


「っぐ……っ!」


「リディア……!」


ルーファスが、血だらけの姿で立ち上がり、わたくしを庇うように前へ出る。


「お前は後ろにいろ……あとは俺が――!」


「いいえ。あなたと一緒に守ると決めたのです……!」


そのとき、セリアが再び倒れ込んだ。


「セリアっ!!」


「ごめん……でも、がんばった……わたし……」


――もう限界だった。


(お願い……力を、力を……!)


その叫びに、応えたのは――


「……リディア」


どこか懐かしい声だった。


「フィーネ……!?」


七色の光が、空から降る。


「今だけ、ほんの一瞬……わたしの“すべて”を預ける。

あなたの願いが、世界を変えると信じているから」


わたくしの胸に、光が収束する。


「これは――《完全精霊融合:グランド・フィリメリア》」


時間が止まった。


そして、わたくしは一歩、踏み出した。


「魔王よ――あなたの“絶望”は、わたくしたちの“希望”には勝てません!!」


剣が、光を纏って伸びていく。

それはもう、ただの魔法ではない。


――祈り。


「これが、わたくしたちの“答え”ですわ――ッ!!」


放った一閃が、魔王の核を穿つ。


「■■■■――――!!」


叫びと共に、闇の王は崩れ落ちた。


黒き瘴気が、空へと還っていく。

まるで夜明けの風に溶けるように――


* * *


「……やったの?」


セリアが、うわごとのように言う。


「ええ。終わりましたわ……」


「ふふ、わたし、役に立てた?」


「ええ、とても。あなたがいなければ、勝てませんでした」


セリアが、泣き笑いを浮かべた。


「よかった……リディアと一緒に、戦えて……」


ルーファスが、膝をつきながらも笑った。


「最後の最後で、ちゃんと“守れた”気がする」


「……ええ。わたくしも、あなたたちと共にいられて、よかった」


空には、夜明けの兆しが見えていた。


でも、この光はただの朝日ではない。


“希望”――それは、こうして作られるのだと、わたくしは知ったのだった。


――そして、戦いの記録は、“新たなる伝説”として刻まれていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ