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『悪役令嬢、最強魔導師として無双します』〜追放されたけどチートスキルで王国も恋もぜんぶ救ってみせますわ〜  作者: のびろう。
第4章『聖女と悪役令嬢、禁断の精霊契約』

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エピローグ 「わたくしの手は、誰かのためにあるのなら」

王都の空に、紅の光が昇っていた。


それは燃え盛る戦火の炎ではなく――誰かの“祈り”と“願い”が、天へと昇華した証。


あの日、神殿で交わされた精霊との契約。

重なった心、交わした誓い。

それは“悪役令嬢”と呼ばれたわたくしの、人生そのものを塗り替えた瞬間だった。


「……紅霞の光が、空を染めたのよ」


屋敷のバルコニーで紅茶を口にしながら、セリアが微笑む。


「王都の人たちは“奇跡”って呼んでる。『精霊の花嫁が降臨した』って噂になってるわ」


「……花嫁、なんて……気恥ずかしい言葉ね」


「でも、似合ってるよ?」


そう言って笑うセリアの横で、ルーファスが黙って紅茶をすする。……不器用な人。褒め言葉の一つも出てこないくせに、視線だけはわたくしの指先にやたらと引っかかるのだから。


「……なにか言いたいことがあるなら、どうぞ」


「……そのドレス、よく似合ってると思う」


「――っ!」


わたくしはカップを落としそうになった。……どうして、こういうときに限って、真顔で口にできるのかしら。


「い、言い方ってものがあるでしょう。もっと、こう、前置きとか……その……雰囲気とか……」


「……誉めたつもりだったが」


「むぅぅ……」


セリアが笑いをこらえきれずに吹き出す。


「やっぱり、リディアとルーファスって面白いわね。お互いに素直じゃないところが、もう見ててニヤニヤしちゃう!」


「セリア、からかわないで……」


頬を押さえて視線を逸らすわたくしに、ルーファスはほんのわずか、唇の端を上げた。


まったく……もう……


けれど。


――この何気ないひとときが、どれほど愛しいか。


わたくしの手は、ずっと“役割”のためにあった。

家のため、王族のため、“悪役”としての立ち位置を演じるため。


けれど、今は違う。


「リディア様、精霊騎士団の入団希望者が続々と届いております」


「はい。すぐに応じます。……団長として」


そう。わたくしは“与えられる”だけの存在ではない。

自ら選び、掴み、誰かを守る立場にある。


「わたくしの手は、誰かのためにあるのなら……その誰かを、自分で決めるわ」


心の奥で、そう誓った。


夜が更けたころ、月影の下で静かに佇んでいたわたくしに、ふわりと風が触れる。


「……また来たのね。アレン王子」


振り返ると、やはり彼がいた。いつの間にか背後に立ち、金の狐眼でじっとわたくしを見つめていた。


「招かれざる客のつもりはないよ。……ただ、君に渡したいものがあってね」


彼の手に握られていたのは、一冊の古びた魔導書。

それは――


「……これは、“禁断契約の写本”。失われた精霊魔導の理論書……!」


「君が必要とする時が、きっと来る。だから、それを君に託すよ」


「どうして、わたくしに?」


「君が“救う人”だから。……僕では辿り着けなかった未来に、君は行ける」


アレンの瞳が一瞬だけ、哀しみの色を映す。


「リディア。君が本当に誰かを愛するとき、世界は――少しだけ優しくなるかもしれない」


「……あなたの言葉、信じるには危うすぎるわ」


「それでも、僕を覚えていてくれるなら、それでいい」


わたくしの髪を一房、そっと指先でなぞるその仕草は、まるで別れのようで――

でも、別れきれない温度を残していた。


夜が明け、神殿の鐘が王都に響き渡る。


わたくしは“騎士団”の正装を纏い、広場に集う者たちの前へと進み出た。


「この手は、もう誰かの操り糸じゃない」


精霊の冠がわたくしの頭上に揺れる。


「この手で、道を切り拓くわ。たとえ、それが茨の道でも――わたくしが選んだ未来なら」


空へと広がる紅の光。

精霊たちが舞い、七彩の羽が空に弧を描く。


やがて、それは“伝説”と呼ばれるようになる。


けれど。


その瞳はまだ、少しだけ不安げで――

そっと、誰かの手を、わたくしは探していた。


だって。


“恋する気持ち”だけは、いまだに――どうしても、ぎこちないままなのだから。


──そして物語は、“本当の恋”へと進む。


ーーーーーーーーー


そのときだった。


空が――微かに、震えた。


ほんのわずかに、だが確かに。

東の空の彼方、雲の切れ間から、禍々しい黒の“鱗光”が一閃した。


フィーネがはっと息をのむ。


『……リディア、あれは……“封印の鎖”が……ほつれてる』


「……まさか、あの存在が……」


風が止まり、空気が一瞬、重くなる。


かつて精霊王ですら封じるしかなかった、“闇の王”。

すべての魔の根源、歴史から消された“名前のない王”が――


眠りの底で、眼をひらいた。


わたくしの掌が、ふるえていた。


けれど、そっとルーファスの手が重なる。


「……行こう。お前の物語は、まだ始まったばかりだ」


わたくしは頷いた。

もう、逃げたりしない。


この手が、誰かを守れるのなら――


闇の王すら、光に変えてみせるわ。


たとえそれが、すべての始まりを覆す“真実”だったとしても。

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