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『悪役令嬢、最強魔導師として無双します』〜追放されたけどチートスキルで王国も恋もぜんぶ救ってみせますわ〜  作者: のびろう。
第4章『聖女と悪役令嬢、禁断の精霊契約』

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「精霊王フィルグレアとの契約試練」

「――ようこそ、“鏡の座”へ」


その声は、風のように柔らかく、それでいて氷刃のように冷たかった。


わたくしとセリアの足元に広がるのは、どこまでも透き通る銀の大地。空は上下の概念を失い、無数の光の時計が浮かんでいた。時が狂い、記憶が反転する異空の空間。


「ここが……精霊王がいる場所……?」


「うん……っ、すごい……でも、少し怖い……」


セリアが震える声で呟いた。


そのとき、時計の中心に裂け目が走った。


まるでこの世界そのものが、わたくしたちを拒むように。


そこから現れたのは、形を定めない存在――光と闇、時間と記憶が編み込まれた巨大な意志。


「……あなたが、フィルグレア」


『我が名はフィルグレア。万象を見届けし、“最後の精霊王”である』


声は空間に響くが、どこからともなく直接、頭に届いた。


『契約を望む者よ。“本当の自分”を鏡に映せ』


「……本当の、わたくし?」


『偽れば、お前は砕ける。記憶も、心も。すべてを――』


世界が、反転した。


目の前の空間が崩れ落ち、音もなく色彩が消え、次に目を開けたとき。


そこは、あの場所だった。


あの、“悪夢”の始まり。


――アルヴェイン公爵家、地下の書庫。


「……っ!」


「いい子だ、リディア。今日も……力を見せてくれ」


“父”の冷たい声が響く。


気づくと、幼い自分がいた。まだ五歳にもならないわたくし。言葉では言い表せない違和感が、記憶の奥底から溢れ出す。


「父様……今日は、もう、やりたくありません……!」


「甘えるな。お前は“役目”を果たすのだ」


“父”の顔に感情はなかった。ただ、才能という名の檻を押し付ける道具としてしか、わたくしを見ていない。


――わかっていた。


けれど、子供だったわたくしは、ただ愛されたくて、認められたくて、魔法陣の中で何度も何度も、壊れながら術式を繰り返した。


「痛い……やだ……っ……誰か……!」


「誰も来ないさ。お前は、“そういう子”だからな」


それが“父”の最後の言葉だった。


その記憶の続きは、虚ろだった。


「……わたくしは、道具だったの?」


『否。お前は、“愛されたい”と叫んでいた。だが誰にも届かなかった』


「届かないから……諦めたのよ。期待なんて、しないほうが楽だった」


『そして自分で“悪役”の仮面を選んだ。滑稽だな。誰かに好かれる資格もないと、最初から決めつけて』


「うるさい……黙りなさいっ……!」


逃げたいのに、体が動かない。過去に飲み込まれそうになる。胸が苦しい。喉がつまる。


セリア……セリアはどこ?


「リディアっ!」


その声に、我に返った。


セリアが、鏡の裂け目の向こうから、わたくしの手を――幼いわたくしの手を取っていた。


「行こう、リディア。こんなとこ、もういらないでしょ!」


「でも、わたくし……」


「あなたが“欲しい”って言ったもの……わたし、知ってるよ」


セリアの手は温かかった。


わたくしは、震えながら言葉を紡ぐ。


「……誰かに、傍にいてほしかった。甘えて、泣いて、抱きしめてもらいたかった。……わたくしだって、普通の女の子になりたかったのよ!」


それは、わたくしの中で長い間、口にしてはいけないと思っていた言葉だった。


誰かに求められたい。ひとりにされるのは、もう嫌。


「だから……わたくしは……!」


「リディア、お願い!」


セリアの声が、祈りのように響いた。


「あなたのままで、戦って!」


その瞬間、時の座が光に包まれた。


『……人間の“欲”を否定せず、なお歩むか。ならば、力を与えよう』


フィルグレアの姿が、万象の結晶体としてわたくしの前に降り立つ。


『その傷を誇れ。弱さを見せられる者こそ、真に強き者だ』


七彩の光がわたくしを包む。


額に、契約の紋章が刻まれた――過去と未来を超えて、わたくしだけの“光”がここにあるという証。


「リディア……っ!」


セリアが抱きついてきた。涙が頬を伝う。


「すごいよ、ほんとに……リディアは、わたしの……大切な人……!」


「……ありがとう。わたくし、ようやく、心の奥で泣くことができたの」


精霊王は静かに頷いた。


『契約、完了。二つの魂は重なり、精霊の理を得たり』


光が収束し、わたくしたちは地上へと還っていく。


けれど、あの声は確かに残っていた。


――“世界は、欲望で満ちている。だが、それは終焉か、再生か――”


 


わたくしの答えは、もう決まっている。


「わたくしは、幸せになる。誰が何を言おうと、これが――わたくしの物語だから」


精霊の王を超え、わたくしは再び、現実へと帰る。


次の舞台で、再び誰かと手を取り合うために。

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