第十七話 惚れた理由
「花月さん、勇斗さん……本当にごめんなさい」
親衛隊のリーダーが小さな声で謝罪した。
次々にメンバーたちも頭を下げて、緊張の空気が流れた。
勇斗は軽く笑って言った。
「大丈夫だよ。気にしてない」
花月も穏やかに答える。
「私も、大丈夫。ありがとう」
それを聞いて、みんなじんわりと救われたように息を漏らし、少しずつ表情をほぐしていった。
すると勇斗が声をかけてきた。
「…花月、ちょっと、話がある」
花月は詩織と夏美の方を見てから答えた。
「先に行ってて。話し終えたら私も行くから」
詩織と夏美はうなずき、小さく手を振って先に帰っていった。
親衛隊も歩調を合わせるように教室へ戻した。
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二人きりになった校舎裏。僕 西島勇斗は深呼吸して口を開いた。
「実は、どうして花月が好きになったのか…ちゃんと伝えたくて」
その言葉に、花月は黙って目を見つめた。
すると僕の声が、やや震えながらも思いを紡ぐ。
「ある日、体育委員会の後……忘れられない光景を見たんだ」
――あの女子グループに向かって、「大っっっっ嫌いなんだよ!!」と怒りをぶつけていた君の姿だ。
あれを見たとき、僕は確信した。
「一つのグループに一人で向かって、自分の考えを貫くなんて……相当な勇気がないとできない。すごくカッコよかった」
それ以来だ。廊下ですれ違うたび、胸がドキドキして――気がついたら「好き」になってた。
「それで…告白したけど、君にフラれた。でも…それでも諦められなくて。君に近づかなきゃって思って、アピールしてた」
僕の心に、ほんの少し寂しさが揺れる。
しかし続いて、正直な気持ちを語った。
「でも…親衛隊のあれは、正直…迷惑だった」
地に視線を落とすが、あくまで誠実な表情だった。
「それで、アピールは全部失敗して。でも…それでも――
君のことが好きだ」
そう言って、再び勇気を振り絞り、真剣な眼差しで花月を見つめる。
「…僕と、付き合ってください」
勇斗は静かに頭を下げた。
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花月は息を整えながら、首を振った。
「ごめんなさい。やっぱり——あなたとは、付き合えない」
勇斗は覚悟していたかのように、小さく笑う。
「やっぱり…そうか」
その後、花月は軽く言った。
「でも…友達としてなら、いいよ?」
勇斗は驚きつつも、目を大きくし、
「いいの!?」と声をあげた。
「うん。友達で、いいよ」
二人の間に、優しい微笑みが広がった。
勇斗はひそりと言った。
「…小さく一歩前進、かな?」
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その後、表に出ると校門前には詩織と夏美が待っていた。
4人は自然に並び、笑顔で一緒に帰路を歩き始めた。
優しく暖かな秋の夕暮れが、二人と二人の新たな友情と関係を祝福しているようだった。
――
教室では、どうやら新しい噂が広がり始めていた。
「花月って、女子が好きらしいよ」
「やっぱり?普通あんなイケメンをふる女っていないよね」
しかし花月本人は、その噂に気づく由もない。
彼女の心は――大切な友人たちとの生活に楽しさを感じていたからだ。




