2話
「ケンとマイは雑魚を頼む!俺は大型をやる!」
短く指示を伝え、リボルバーを構える。
俺のリボルバーは.44マグナムを装填したS&W M29だ。
対モンスターとして、多くのハンドガンは火力不足だった。
しかしこのリボルバーは熊を撃ち殺せるほどの威力がある。
初期のモンスターとの遭遇戦においても有効な戦績を残した。
ハンドガンをメイン武装とする戦士の中で、最も人気の高いものが、このリボルバーだった。
先程ケンに銃撃されたサメと目が合う。
まずは最も耐久の薄そうな目を狙う!
「当たれっ!」
2連射した弾丸が螺旋状に回転しながらサメの双眸へと吸い込まれていく。
コンマ3秒ほどの間隔で命中した2発の弾丸は、狂いなく眼球を撃ち抜いた。
俺の攻撃は通るぞ!
「さっすが大将!」
「シュウくんさすが !」
小型のモンスターを蹴散らしながら2人が歓声を上げる。
このままおしきる!
「次は脳天だ!」
再び放たれた弾丸がサメ型の脳天へと着弾し皮を引き裂く。
続けて同じ箇所に着弾した弾丸が骨を穿ち、3発目の弾丸が脳内を貫いた。
「やった!このまま逃げるぞ!」
「おう!」
「はいっ!」
小型のモンスターをいなしつつ、俺たちは海岸を後にした。
15分ほど走ると、町内へと辿り着いた。
同じく撤退してきた戦士達によりバリケードが築かれ、野戦用の陣地となっていた。
「俺たちもここでやれることをやろう」
「シュウはとんでもない一日だねぇ!
朝リンを送ったばっかだってのに」
「ぬかせ」
「でも精鋭5人が抜けた穴はきっと大きいよね 」
「ああ。そうだな」
リン1人に関して言えば、いくら強いとはいえ学生1人だ。
しかし残りのメンツも考えれば大きな戦力低下だ。
少なくとも現場で隊を指揮できるだけの人材が4人いない。
「そうでなくても、あれだけの被害を海岸で出したんだ」
まともにモンスターたちとやりあった戦士は、サメ型に囲まれて壊滅していた。
山あいの戦力を呼び戻したとしても、この街を守りきるのは難しいだろう。
「となると」
「街を放棄する。そのはずだ」
30分の後、魚型だけでなくサメ型がバリケードへと攻撃し始めた頃、恰幅のよい中年の男が櫓へと上がった。この街の全権を握る市長だ。
「皆の者。今までよくぞ耐えきった。これより我々はこの街を放棄し、松本都市へと移動する!」
歓声が上がる。
命を賭して時間を稼いだ甲斐があった。
「撤退には西側山道を用いる。
これより部隊を3手に分け、1隊を山道のモンスターの排除、2隊をこのバリケードの防衛、3隊を民間人の護衛に回す!各自持ち場を確認し任務を遂行せよ!」
「おおおっ!」
戦士たちは鬨の声を上げ、持ち場へと移動した。
「俺たちは護衛か」
「学校のみんなも、護衛みたいだね!」
若い戦士と見習いを中心に護衛に回されてる。
これじゃあ護衛する側かされる側かは微妙なとこだな。
「あれシュウのお母さんじゃないか?」
「ほんとだ。上手く逃げられてたか」
俺とリンの家は街の中では浜に近い。
もしかしたら逃げ遅れてるかもと思っていたが、両親ともに無事なようだ。
「声掛けてきていいぞ?護衛対象の心理ケアってことで!」
「お前らの親はまだみつかってないだろ?俺は無事を知れたんだから十分だ」
街を放棄するほどのことになったのだ。
それに無事ならあとで、いくらでも話す時間はあるだろう。
「護衛D班!魚型が1部回り込んできている!お前らで対応しろ!」
「了解!」
俺たちは魚型を蹴散らしに向かった。
その後は遅滞なく山道へと避難を始め、バリケードや山中の部隊にも撤退の命令が出された。
全軍で鎌倉を脱することとなったのだ。
明日も同じ時間に投稿します!