14章 同窓会(1)
ほォ~。
これはちょっと感動。
本屋で買ったシルバーアクセ専門誌。
載ってるよ~。
おれが。
おれの店が。
「よっくん、これでまた有名になるね」
専門誌を開き、ガン見してるおれの横から、母さんが顔を出した。
そうだった。
この取材の直後、テレビのローカル局の取材も受けた。
こっちはすぐに放送された。
母さんがばっちり録画。
正確には、母さんがおれにそう指示した。
母さんってば、すっごく機械オンチ。
ケータイ持たせて何年もなるのに、最近になって、やっとまともなメールが打てるようになったくらい。
<ヒロ、やったなァ>
これはカイ兄。
メールがあった。
<芳宏へ。よく頑張ったな。大変だろうけど、これからも気を抜かずに頑張りなさい。>
これは1番上の兄。
2番目の兄からもメールが来たけど、ほぼ同じ内容。
内容からも分かるけど、この二人、すっごくマジメ。
そして、意外な人物から電話があった。
店の電話はなるべく出るようにはしてるんだけど、アクセを作るときはちょっとムリ。
手も汚れてるし。
で、作業をしながら留守録に切り替わった電話に聞き耳をたてた。
『上野です。覚えてますか?高校時代、一緒に体操やってた。今度OB会があるんで、連絡ください』
・・・・・・。
ウエノ?
上野!
すぐに出ようとしたけど、切れちゃった。
おれは手を洗って、すぐに電話をかけなおした。
あれ・・・?
このシチュエーション、どっかで・・・?
おれは軽いデジャヴ感。
デジャヴとは、記憶の混乱から起きる錯覚。
けど、これはまぎれもない過去だった。
すぐに記憶がよみがえった。
あァ、あの時か。
コール2回で相手が出た。
「もしもし、樋口だけど」
最近は使うこともなくなった旧姓も、すぐに出てきた。
焦ってしまい、相手が上野だと確認する前に言ってしまった。
『おう、久しぶりだな』
「そうだね、大学2年のインカレぶりか」
高校を卒業した上野は東京の大学に進学した。
もちろん、体操を続けてた。
全国レベルの試合では、いつも会ってた。
けど、おれが大学を辞めてからは連絡も取ってなかった。
慌しく引っ越しして、名前も変わっちゃったし。
『お前、姓が変わったんだな。婿入りでもしたのか?』
上野はおれがゲイだってことを知らない。
「いや、親が離婚してね。母方についたんだ」
『ああ、それで大学辞めたんだったな。お前ンとこの先輩、くやしがってたぞ』
悪いことをしたとは思ってる。
けど、当時のおれには体操以上に大切なことだった。
母さんを守ることが。