おれの旅立ち (6)
仕事にもなれてきた。
もちろん、一年を通したワケじゃないから、これから分からないことが出てくるかも。
おれは勉強した。
お勉強ダイスキ!
今まで買ったことのないメンズカジュアル系の雑誌やアクセサリー雑誌を読み漁った。
最近の流行や、ファッションカテゴリー。
見てるだけでも楽しかった。
そして、それを仕事へとフィードバック。
「ディスプレイ、うまくなったわね~」
大岩さんがほめてくれた。
素直にうれしかった。
仕事に追われる毎日は苦痛ではなく、おれにとって充実した日々だった。
けど、ふと、気づいた。
おれ、このままでいいんだろうか。
この仕事、パートだもん。
今は若いからいいけど、30も40も過ぎてパートはツライ。
自分がなにをしたいのか、探さないと。
それともうひとつ。
おれはオトナにならないといけないと思っていた。
ツウセツに感じた。
「小森クンって、カレシいないの?」
大岩さんと同じ質問を、おれは何度か受けた。
大岩さんにカミングアウトした翌日、女性社員からの質問攻め。
バラされたことには不思議とハラは立たなかった。
みんな理解してくれたから。
君里さん。
小さな女の子だった。
おれよりひとつ年下の19歳。
けど、高校を出てすぐに就職したようで、すでにベテラン。
「で、小森クンはアレの経験はしたの?」
・・・アレってなんでしょう?
おれがクエスチョンマークを撒き散らしてると、君里さんは顔を近づけた。
「えっちのことよ」
おれは頭に血がのぼるのを自覚した。
「ほほォ、その反応では、まだだね?」
「お、遅い、ですか?」
「敬語はいらないよ」
休憩室で、紙パックのジュースのストローをくわえながら、彼女は言った。
「お、遅い、のかな?」




