おれの旅立ち (4)
引っ越しもすんで、おれと母さんは静かな毎日を送っていた。
けど、3日目には飽きた。
おれは仕事を探した。
大学中退のおれ。
ましてA市は田舎。
いや、聞いてたいたけど、こりゃスゴイ。
町の中心部はそーでもないけど、ちょっと車で走ると、馬や牛が放牧されてる。
どんだけ田舎なんだろ。
そんな土地で、仕事は限られた。
・・・てか、おれって、なにがしたいんだろ。
考えたこともなかった。
求人情報誌を読む毎日。
なにがしたいのか自分でも分からないもんだから、仕事も見つけられない。
母さんはいとも簡単に仕事を見つけた。
家から車で5分ほどのところにある、老人ホームの調理担当職員。
3日後から仕事だそうだ。
あ、おれ、免許は引っ越す前に取った。
車は中古の軽。
とにかく、安全に動けばいいと思ってたから、車種なんてどーでもよかった。
う~。
おれも早く見つけないと。
おれは母さんをつれて、慣れない道を車で走った。
近くに大型のスーパーがある。
そこで今晩の夕飯の食材を買うんだ。
店内に入って、なんとなく見かけたインフォメーションボード。
そこにはパート社員募集の文字。
メンズカジュアル担当を募集と書いてある。
メンズカジュアルかァ。
楽しそうだな。
おれはさっそく、電話番号と担当者の名前を覚えた。
5回復唱して暗記。
家に帰って、すぐに電話を取った。
あの店に電話して、明日面接とゆーことになった。
決まればいいな。
大学に入ってからは、私服が増えた。
おれはカイ兄を見習って、少しはファッションセンスに磨きをかけた。
それなりに見られるようにはなってるはず。
そして、当日。
面接を受け、何度かのやり取りあと、採用が決まった。
早ッ!
「前の人が急に辞めてね。すぐにでも来てほしいんだ」
なるほどね。
そりゃ即決もするだろうな。
副店長さん。
人のよさそうな顔をしてる。
「はい!頑張ります!」
おれの新たな人生が始まった。