おれの旅立ち (3)
母さんの苦労は報われることはなかった。
そうさせたあの男を、おれは許さない。
父さん、せいぜい寂しい人生を歩むといい。
そして、一人で死んでいけばいい。
おれは母さんを守る。
離婚の財産分与で家を売り払うことにした。
中古物件の安普請はたいした金額にはならなかったけど、ないよりはマシだ。
それと、おれのバイトで貯めた金。
余分な家財道具の処分や、引っ越しで使うであろう資金。
結構金がかかるもんだな。
貯めててよかったァ~。
けど・・・。
自分なりに見積もってうんざり。
概算にしても、残った金も3年もすれば尽きるだろうな。
仕事、探さないと。
その前に引っ越さないと。
・・・引っ越し。
えーと・・・。
そーいやァ、引っ越し先、決めてなかった。
どこに行こっかなァ。
こんなときにナンだけど、おれはちょっとワクワクしてた。
引っ越しなんて初めてだし。
なんか、自由になれたって感じ。
「母さん、どこに行きたい?」
「ん~、のんびりしたコトがいいなァ」
答えになってませんが・・・。
まァいいや。
おれはずいぶん荷造りの進んだダイニングのテーブルに、県内地図を広げた。
県外は考えてなかった。
母さんも、兄たちと離れすぎるのをイヤがったから。
「んじゃァさ、ここはどう?」
おれのさした指の先。
そこはA市。
今住んでるH市とは隣だけど、それは地図上だけ。
A市はかなり田舎だと聞いてる。
行ったことがないから、確かじゃないけど。
「うん、そこにしよう!」
母さんは元気にそう言った。
さっそく賃貸雑誌をあさり、A市の借家を探した。
あっさり発見。
しかも一軒家。
こりゃァいいや。




