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どうかご自愛を・・・  作者: かのい かずき
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おれの旅立ち (2)

おれが20歳になるのを待ってましたといわんばかりの離婚だった。



けど、どうせ待つのなら、卒業まで待ってほしかった。



ま、しちゃったものはしょーがない。



おれは母さんと一緒にいることにした。



これは前から決めてた。



名前は「樋口」から「小森」になった。



今までの付き合いがある人たちには「樋口」のままで通したけど。



2年の全日本選手権を最後の花道にと、おれは全力を出し切り、優勝。



そして体操を辞めた。



「ホントに辞めるんだな」



先輩は残念そうだった。



「はい。すみません」



謝ってはみせたけど、おれにはもう体操への未練はない。



小学校3年から始めた体操。



走り続けた12年。



走ってるときはいつ終わるか分からなくて、苦しかった。



けど、終わってしまえば、なんと早いものか。



「お前なら、オリンピックも狙えたのにな」



その魅力は、今のおれには輝いて見えない。



正直、疲れてた。



さすがに勉強と体操、それにバイト。



まともに寝る間もなかった。



限界が近かった。



「大学も辞めるってホントか?」



「はい。今日、退学届けを提出します」



みんなの期待を裏切ってしまった。



おれはこんなところで、高校時代の思いを現実にしてしまった。



すべてを捨ててしまいたいと思っていた、あのころ。



今、思う。



あんなこと、思うんじゃなかったって。



「短い間でしたが、お世話になりました」



「おう、ま、たまには遊びに来いや」



「ええ、必ず」



先輩の言葉は本心だろうけど、おれは本心じゃなかった。



多分、もう、ここに来ることはない。



先輩たちと会うことも、ない。



おれは遠い所へと引っ越すから。



母さんと一緒に。



母さんは寂しそうに言った。



「よっくん、家、出てもいい?」



「うん、一緒に行くから。大丈夫だよ」



どうして?



なんて聞かなかった。



だから中間をすっ飛ばした返事をした。



「ありがと、よっくん。・・・ごめんね」



初めて、母さんが泣いてるところを見た。


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