中沢の旅立ち(2)
後ろから見る中沢は・・・カッコイイ。
おれはジャマしない程度に近づいた。
「中沢、みんなが写真撮ろうって」
「・・・ああ」
気のない返事だ。
「・・・中沢?」
おれは中沢の横に立った。
遠い目だ。
その目で、どこを見てるんだろう。
「よく、ここにいるって分かったな」
「うん、まァ」
愛のチカラです!
って、言ってやりたい。
けど言わない。
おれの愛は中沢の未来の邪魔だ。
「樋口」
「なに?」
おれは中沢の隣に腰をおろした。
「おれ、おばさんの家、出るんだ」
「そっか。卒業したから?」
「それもあるけどな。一度、家に戻るよ」
「ふうん」
そーいやァ、中沢ンちって、どこ?
「中沢の家って・・・」
「あぁ、S市にあるんだ」
え~と・・・。
おれは頭の中で県内地図を広げた。
・・・マジ遠いッス。
おれにとっては県外、いやもうあの距離感は国外も同じ。
同じ県内なのに、おれの住むH市とは遠く離れた土地だ。
「4月には東京に行くよ」
更にダメ押し。
「よかったな。お父さんに分かってもらえて」
「お前のおかげだよ。ま、親父がちゃんと理解してくれたのかは疑問だけどな」
明るい笑顔をおれに向けてくれた。
「正直、行ってほしくないみたいなんだ。だから、3月いっぱいは、親孝行してやろうかってね」
そう思える中沢がうらやましい。
おれの父さんは、おれには遠すぎる。