抱擁(7)
・・・・・・・・・。
ナニガ、起コッタ?
おれの頭は真っ白。
脳細胞が考えることをやめてた。
おれの頭の右側には、中沢の頭。
後ろ向き。
当然か。
ふわりとただよう整髪料の甘い香り。
そして、きついくらいに抱きしめられたおれ。
・・・・・・。
!!!
中沢に抱きしめられてる!!
ど、どうしよ。
おれ、どうすればいいのかな。
おれの両手は下がったまま。
この手を中沢の背中にまわせばいいのか?
い、いや、それじゃゲイじゃないか。
・・・おれはゲイなんだろうけど。
落ち着け。
これはハグだ、ハグ。
ハグハグハグ。
感謝や親しみを込めたアレだ。
うん、きっとアレだ。
そうに違いない。
中沢、やめてくれ。
そうじゃないと、おれはお前を抱きしめてしまいたくなる。
早く解放しろ。
おれの腕が意思に反して上がる。
早くってばっ!
両手が中沢を包み込もうと伸びる。
わァ~!
腕を解け~!
中沢ァ~!!
あと少しで、おれは中沢の背中に触れる。
・・・もうダメだ。
おれは諦めた。
心の欲求には勝てなかった。
さよなら、中沢。
こんなおれを知ったら、軽蔑するだろうな。
絶望の淵に立たされたおれは、ふと、解放感に包まれた。
あれ?
目の前には中沢。
「ゴメン。うれしかったから。イヤだったろ?」
いいや。
ぜんぜん。
てか、シアワセ。
「い、いや。そ、そんなことない。びっくりしたけど」
顔が厚い。いや、熱い。
もはやおれの言語変換能力もイカれてる。
「樋口、ホントにありがと」
目をそらすのもなんかヘンで、おれは真っ赤な顔をしながら、中沢を見つめた。