怒りのはずが・・・(6)
「今日、会える? おれ、嫌われたのかな。
おれたち、これからどうする?
別れたいのなら、それでもいい。
けど、一度会ってきちんと言ってほしいな。
今日、仕事終わったら、そっちに行くから。
ゴメン、最初で最後のわがままだけど、聞いてくれるとうれしいな」
う~ん、重い。
めっさ重いッス。
そりゃ重いって言われるだろ。
自分で思い返しても重いぞ。
その結果があのメール。
自分で傷を作って思いっきり広げたね。
グワッ!と。・・・出血多量。
よくショック死しなかったものだ。
けど、おれにも言い分はある。
遊びじゃなかった。
ただの遊びならこんなことはしない。
おれはガイが送ってくれたメールを、ひとつひとつ読み直した。
その中に、こんなのがあった。
『ヒロさん、会ってくれてありがとう。
楽しかった。
こんなおれでよかったら、今後とも付き合ってもらえますか?』
ほら、付き合ってた。
まぁ、「付き合う」の意味にも幅はあるかもしれないけど、おれはこれを男女間で言う「交際」だと思った。
楽しかった。
実際に会えたのは6回だけだったけど、おれは幸せだった。
でも、それは永遠には続かない。
それは分かってた。
──なぜ?
初めて会ったとき、思った。
いや、正確には再会。
彼はガイと名乗っていた。
彼は気づいていなかった。
おれが彼を知ってることを。
彼の中で、過去のおれは消えていた。
それでもよかった。
そして、この再会はいつか終わりを告げる。
直感。
そう言っていいかな。
おれは<その日>が来ないように願った。
会うたびに、別れの日が近づいていくようで怖かった。
最初に思ってしまった未来は現実となった。
おれはあのメールを見たあと、すぐに返信。
『重いか。
そんなつもりはなかったんだけど。
そういうことなら早く言ってくれればよかったのに。
今までありがと。お元気で』
こりゃまた重いぜ。
「そういうことなら・・・」は余計だったかな。
まぁいいや。
で、なんでガイは怒ってるんだろ。
敵を見るような目をしてた。
やっぱおれが悪いんかなァ。
そう思うと謝るのはこっちのような気がしてきた。
気がすると止まらない。
おれは久々にガイにメールを送った。
「しつこいと思うかもしれないけど、読んでくれたらうれしいな。
この前はゴメン。
イヤな思いをさせて。
ガイが人とのつながりを大事にする人だってこと、すっかり忘れてた。
それなのに、あそこまで言わせた。
被害者ヅラして、ガイを責めた。
ガイ、この前、すれ違ったね。
怒ってた。
おれはそんなガイを見たことがなかった。
そんなにおれ、ガイに嫌われるようなこと、したんだね。
でも、今はそれがなんなのか、分からないんだ。
今はメールでしか言えないけど、いつか、また会うときが来たら、きちんと謝らせてよ。
こんなメール、読んでくれてありがと。
ウザかったでしょ。申し訳ない。
幸せになってね」