迷走(6)
門から出てきたのは、農作業風な服を来たカップクのよさそうなおばさんだった。
「あ、あの・・・」
次の言葉が出ない。
「もしかして、雅樹君のお友だちかしら?」
「は、はい!あの、え、えーと。クラスメイトの樋口といいます。な、か、ざわ君が最近休んでるので、担任からプリントをことづかりました」
中沢とゆー名詞が言いにくい。
だって、表札には「堀川」なんだもん。
「まあまあ、わざわざ来ていただいて、ありがとうございます」
どうやら間違いないらしい。
農作業風なおばさんは日よけの帽子を取って、おじぎをしてくれた。
見た目はフツーのおばさんだけど、しぐさや言葉遣いは上品だ。
「ごめんなさいね、こんな格好で。今、畑の手入れをしてたもんだから」
照れた感じがなんだかカワイイ。
「畑があるんですか?」
「ええ。私は田舎の出身でしてね。結婚してからも、それが忘れられないの。主人はやめろって言うんですけど、これだけは私の趣味だからって譲ってあげないの」
いたずらっ子のように笑う。
年を重ねてもかわいらしさを持てるって、スゴイ。
「立ち話もなんですから、どうぞ、中へ」
「は、はい」
どひゃ~。入っちゃうよ、おれ。
い、いかん。右手と右足が同時に・・・。
さりげなく、小さくステップを踏んで修正。
・・・バカかおれは。
玄関。
これまた広い。
吹き抜けのホールみたくなってる。
「さ、どうぞ」
用意されたスリッパはウチでは見たことない高級ブランド。
ちなみに、ウチで使ってるスリッパは300円!まいったか。
もう、ヤケになりかけでおれは開き直った。
案内されたリビングは・・・。
いやもう、お金持ちってスゴイね。
実物のシャンデリアってもの初めて見た。
「緊張なさらず、くつろいでください」
・・・見抜かれてます。
「今、雅樹くん呼びますから」
と、おばさん・・・改め、おばさまはインターホンを取った。
家の中で電話とは。
「雅樹くん、お友だちの樋口さんがお見えよ。いらっしゃい」
受話器を耳に当てながら、おれに優しい笑顔を見せてくれた。
優しそうなお母さんだ。
「え?どうして?いいから、いらっしゃい」
・・・ん?なんか、イヤがられてるのか?中沢の声は聞こえないけど、おばさまの対応から予測はできる。
「雅樹くん、いらっしゃい!」
急に厳しい口調に、おれがビックリ。
「せっかくお友だちがいらしてくれてるのに、失礼でしょ!いいから、いらっしゃい!」
うっわ~。この人、優しいだけの人じゃないんだ。




