迷走(5)
翌日、おれは中沢に会いに行くことにした。
さいわい、今日は土曜。
練習も5時に終わり、見舞いに行くにはグッドなタイミング。
・・・なにがさいわいだ。
行きたいとゆー思いと、行きたくないとゆー思いがせめぎあう。
どーしたもんか。
すっぽかしてやろーか。
いやダメだ。
一度引き受けたんだ。
果たさなきゃ。自分から引き受けたワケじゃないけど。
飯田先生から中沢の住所を教えてもらった。
学校から近い。
でも、渡されたメモに「堀川家」と書いてある。
堀川って、なに?
聞けばよかったんだけど、渡されたときにはそんなの見なかった。
まァいいや。
行けば分かるだろ。
学校から徒歩20分。
閑静な住宅街ってヤツだな、ここ。
番地はと・・・。
おれは電柱のプレートを見つけ、確認した。
近いな。
カンだけを頼りに路地を右へ曲がった。
左側は角地から続く白い塀。
しかも、ずぅ~っと続いてる。
長く続く塀の途中の電柱のプレート。
中沢の家が近いってことを教えてくれた。
その塀は次の路地まで続いてた。
1ブロック丸ごと敷地。
お金持ちの家らしい。
その路地を塀づいたいに左へ。
すると、門があった。
・・・もしかして。
な~んか、イヤな予感。
表札を見ると。
・・・堀川。
逃げよっかな~。
いや、マジ、ヤバイっすよ。
なにがヤバイのかおれにも分からんが。
ど、どうしよ。
開かれたままの門から、中の様子が少しだけ見える。
キレイに手入れされた庭は広い。
お金持ちなフンイキたっぷり。
インターホンがあるけど、おれにはそのボタンを押す勇気がなかった。
かといって逃げるワケにも・・・。
真木のばかやろ~。
うぅ、今のおれって、どうみても小市民。
・・・事実だけど。
「どちら様?」
門前でフリーズしてたおれは、その声に文字通り飛び上がった。