怒りのはずが・・・(5)
今はそれどころじゃなかった。
母さん、ゴメン。
車の中で母さんの話を聞き流しながら、おれの頭の中はガイのことだけでいっぱいだった。
やっぱ、おれが悪いのかな。
あんなメール送ったりしなきゃ、こんなことにはならなかったかも。
いや、違うな。
遅かれ早かれ、こうなることは分かってた。
形は違うけど「別れる」ってこと。
付き合い始めたころのガイは、毎日のようにメールをくれた。
何気ないメールでの会話。
お互いの共通の趣味の話。
そして、・・・ベッドの中でのこと。
ガイは読むだけで恥ずかしくなるような内容のメールを、へーキで送ってきた。
おれはガイにつまらない思いをさせたくないために、一生懸命文章を考えて返信した。
それが楽しかった。
何度か会って、二人で大切な時間を共有した。
優しいガイはいつもおれを気遣ってくれた。
けど、メールは減った。
男って、釣った魚にはエサをあげないってホント。
そう思いながらも、仕事で忙しいんだって自分に言い聞かせた。
「仕事と私、どっちが大事?」
と言う女をバカだと思ってたけど、今なら分かるな、その気持ち。
おれも言いたかった。
けど、それはダメ。
反則。
おれだって仕事してる。
大事な仕事だ。
ガイと仕事、どっちが大事かって聞かれると、すっごく困る。
だって次元が違うんだもん。
「仕事、忙しいだろうけど、ムリしないようにね」
とか、そーゆー感じの、ガイをいたわるメールを送ることしかできなかった。
返事は10回送って1回来たり、来なかったり。
そして、最後に会ってから5ヶ月後。
おれは覚悟を決めた。
だっていくらメールしても返事ないしさ、ちょっとくらいわがまま言ってもいいかなって。
ガイは以前、言った。
『いつでもわがまま言っていいんだからな』
おれは今までそれを実行しなかった。
ガイを束縛するようなマネだけはしたくなかったから。
けど、やっちゃった。