表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうかご自愛を・・・  作者: かのい かずき
57/155

秋の空(7)

多分、お父さんは中沢がなにを望んでいるのか、知ってるんだ。


けど、自分の考えも知ってもらいたい。


フクザツだ。


おれはどんな返事をすればいいんだろ。


考えた。


テストのとき以上に、脳を回転させた。


「自分の思うままにすればいいんじゃないかな」


おれは正直に気持ちを伝えた。


「お父さんの言うことも正しいけど、それで中沢は満足しないだろ?だったら、自分のやりたいことをすればいい。もし、中沢がお父さんの言うとおりの生き方を選んでも、なにも得られないと思う」


おれのような、中身のない人間になってほしくないんだ。


「中沢が真剣に音楽をやっていきたいと思って、いつかメジャーになれば、お父さんも納得してくれるよ」


「・・・そうだな。ありがと」


中沢はくもりから抜け出したような笑みを浮かべた。


その笑顔はおれにはまぶしすぎる。


封印の鎖にヒビが入る。


「な、次のライブ、来てくれよ」


「・・・うん、スケジュールが合えばね」


おれは言葉をにごした。


今度はおれがくもる番だ。


沈黙が続いた。


き、気まずい。


中沢は空になった紙パックのお茶を握りつぶすと、ふっきれた笑みで空を見上げた。


「樋口、おれな、今好きな人がいるんだ」


うん、知ってる。


「前、ライブで言ってた人だろ?」


「ああ」


「告白はしたの?」


「してない。多分、おれのことなんか、見向きもしないヤツだから」


なんて人だ。


中沢の想いに気づかないなんて。


大バカヤロ~。


・・・いや、女の人だからヤローじゃないな。


なに考えてるんだろ、おれって。


「けど、いいんだ。おれはそいつを見てるだけで」


そっか。


中沢もセツナイ想いをしてたんだ。


じゃ、いっちょ、おれも。


「おれもさ、実はフラれたんだ。片思いだったけど」


おれの言葉に、中沢は目を丸くした。


意外そうだった。


「そいつには、大切な人がいたんだって。おれじゃかなわない」


お前のことだよ。


言ってやりたかった。


おれと中沢は空を見上げた。


秋の空は高い。


この空に思い描く未来。


おれの見てる空と、中沢の見てる空は違うんだろうな。


空に届く前に、この気持ちが交わればいいのに。


けど、おれの気持ちは中沢の近くにいても、ずっと交わらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ