怒りのはずが・・・(4)
おれの隠れた得意技。
反対車線から向かってくる車の、ナンバーとドライバーを瞬時にとらえること。
ガイはおれに気づいたようだけど、おれがガイに気づいたことには気づいてないはず。
おれは車を運転するとき、サングラスをかけるから。
色の濃いやつ。
ナンバー確認。
・・・ドライバー確認。
──ガイ。
こっちを見てる。
・・・ような気がした。
そして、怒ってる。
・・・ような気がした。
なんで?
なんで怒ってんの?
おれは運転だけはしっかりとしながらも、心の中はパニック。
意味が分から~ん!!!
お、落ち着け。
とにかく落ち着け。
えーと、まず、理解したこと。
彼は怒ってる。
それとは別として元気そうだ。
よかった。
そしておれはパニック。
・・・・・・。
冷静に自己分析してンじゃねェ~!
通りすぎて行くガイの車をルームミラーで見送りながら、おれはため息ひとつ。
母さんの勤め先が近い。
ここからはよい息子モード。
母さんは雨の日以外は外で待ってる。
助手席のドアがぴったり母さんの前にくるように、おれは車を停めた。
「お待たせ」
「待ってないよ~」
母さんは今年57歳になる。
もう若くない。当然だ。
昔はスパルタな人で、右手に竹刀、左手に木刀を持ってるような人だった。
もちろん、厳しいだけの人じゃない。
けど、今は違う。
ここ数年、年を追うごとに幼さが見え隠れ。
ボケてるのとは違う。
母の天然ぶりは確かに幼さと同じ速度で増え始めたけど、いざってときの強さは昔と変わらない。