歌声(5)
3組、4組、5組と、おれはずっと静かにミュージシャンたちの曲に聴き入った。
つまらないんじゃない。
それどころか、楽しかった。
「おい、中沢が出るぞ」
5組目のグループの演奏が終わって、真木が教えてくれた。
どうやら最後が中沢のいるグループらしい。
なんて言ったかな・・・。
そうそう、「MTR」だ。
5人の男女がステージに出てきた。
手早く準備をすませる。
中沢はステージの真ン中。
黒くつやめくギターを持ってる。
マイクの高さを調節しながら、観客たちに目を向けると、ニヒルな笑みを浮かべた。
キャ~ッッ!!
女の子たちの歓声。
すでにステージの周囲は女の子でいっぱいだ。
小さなホールのステージは低く、観客席も近い。
手を伸ばせば届くくらいの距離だ。
音の調整も終わって、静かになった。
中沢はマイクを握った。
「今日は来てくれてありがとう。ンじゃ、MTR、いくぜッッ!」
声とともに演奏が始まった。
青白いライトの中の中沢はカッコよかった。
つややかに光る「パンツ」。
革のブーツ。
スタイルだけじゃなく、歌う中沢はサイコーだった。
それだけじゃない。
体を揺らすドラム。
ギターやベースは激しいながらも耳に心地いい。
キーボードは曲に深みを与えてくれる。
すべてが、今日の出演グループの中でイチバンだと確信できた。
そして、中沢の歌声は・・・。
おれの心を突き抜けた。
・・・中沢。
おれは・・・。
中沢が好きなんだ。
今、それがすんなりと認められるようになった。




