歌声(4)
突然、照明が全部落ちた。
まっくらで何も見えない。
そして、いきなりの爆音。
「!」
おれは文字通り跳ねた。
音に驚いて。
爆音はちゃんとしたリズムを持ってる。
暗闇に慣れると、みんな体を小刻みに揺らしてる。
これがノッてるゆー現象か。
メモしとこ。
おれは頭の中のメモ帳に新規登録した。
ステージが明るくなった。
いつの間にか、そこにはバンドグループがいた。
女の子ばかりのグループだ。
「どうだ、スゲーだろ?」
隣にいる真木が、なぜか得意げだ。
けど、音がすごすぎて、よく聞こえない。
「エー?」
おれは耳に手を当てて聞こえないジェスチャー。
「ス・ゲー・だ・ろ!」
真木は手でメガホンを作った。
いや、そこまでしなくても聞こえるけど。
「うん、すごい」
おれは頷いた。
おれの知らない世界だった。
激しい曲とリズム。
そして眩しすぎるくらいの照明。
脳を突き抜けるような歌声。
すべてが新鮮だった。
2組目は大学生の男性グループだった。
高校生から見ると、
大学生はまさしくオトナだ。
演奏も歌声もパワフル。
スゲー。
そんな言葉しか思いつかない。
彼らの演奏は、観客をひとつにした。
みんな、リズムに合わせて腕を突き上げる。
おれもちょっとやってみよっかと、腕を上げてみた。
・・・1回だけ、小さく上げてみたけど、恥ずかしくなってやめた。
隣にいる真木は腕だけじゃなく、突き上げる腕にあわせて体も跳んでる。
そんなことができる真木がうらやましい。