怒りのはずが・・・ (3)
あの日から1週間がすぎた。
おれは毎日仕事に励んだ。
仕事が休みの日も仕事してた。
家で。
おれの将来の夢。
それはシルバーアクセサリーのデザイナーになって店を持つこと。
正社員にならず、パートでいる理由その2。
実はすでに個人事業主。
ガイと出会う前からシルバーアクセサリーを趣味で作ってた。
面白くなってきたんで、いっちょ商売したろかと、HPを立ち上げた。
専門学校を出たわけじゃないから、テクニックはない。
だから商品としてのクオリティを表現できるまで作りまくった。
で、今──。
売り上げで生活できるってレベルにはほど遠いけど、ぎりぎり赤字じゃないくらいにはなった。
そんな理由でおれには休日なんてない。
今日は仕事が休みで、前日から新作のサンプル作りに没頭して朝6時まで起きてた。
さすがに視界が白くボヤけてきたから寝て、起きたら正午をすぎてた。
いけね。
母さんを迎えに行かないと。
母さんは昼すぎまでのパートに出てる。
朝はおれと一緒に出て母を送り、帰りは同じ職場の人に送ってもらってる。
おれが休みの日はおれが迎えに行くのが筋ってもんでしょ。
6時に寝たおれは8時に一度起きた。
半分寝ながら車を走らせ母さんを送った。
そしてまた寝た。
♪~♪~
どこかで見てるんじゃないかってくらいのタイミングでケータイが着信。
このメロディは母さんのものだ。
留守電に切り替わる前に、おれはケータイを開けた。
「はいはい」
『よっくん起きた~?』
「・・・うん、起きた」
寝起きに母さんのテンションはツライぞ。
『じゃ、待ってるから、よろしくね~』
「わかった」
ケータイを閉じて、おれはベッドから這い出た。
顔を洗って、髪をセット。
ヒゲが伸びてるけど、まぁいいや。
ただ母さんを迎えに行くだけだし、まいっか。
自宅から車で5分。
そこが母さんの勤め先。
けど、見たくないものを見ちゃった。
反対車線から走ってくる車。
見覚えあり。
ガイの車だ。