表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうかご自愛を・・・  作者: かのい かずき
39/155

やる気の夏(3)

中沢はいつもの無表情のまま、


おれの席に向かって歩き出した。


わざわざ断るためだけなら、来なくてもいいのに。


中沢のばかやろ~。


「樋口」


「はい、なんでしょう」


今日初めて、中沢がおれに話しかけてくれた。


うれしいのに、


セツナさは消えない。


嫌われてるんだし。


「今度のライブ、ゼッタイに来て欲しい」


ほら言われた。


ダメじゃん。


「・・・はい。行きます」


おれはどんよりと曇った顔で答えた。


行きますよ。


分かりました。


行きゃァいいんだろ。


ちくしょ~。


なにがライブだ。


おれは中沢に嫌われてンの。


それなのに、なにがライブだよ。


あ~ぁ・・・。


中沢の歌、聴きたかったなァ。


・・・ライブ。


・・・・・・?


・・・・・・!


「行きます!」


おれは中沢の鼻先とぶつからんばかりに身を乗り出した。


「行かせていただきます!」


「お、おう。サ、サンキュー」


中沢はおれの気迫におされ、一歩後退。


「ゼッタイ行くから」


「何度も言わなくてもいいから」


そのときになって、おれは中沢に近づきすぎたことに初めて気がついた。


「!!! ゴ、ゴメン!」


おれのヘンな反応に、中沢は目を丸くして笑った。


その笑顔もまたなんとも言えず・・・。


「お前、おかしなヤツだな」


いい。 中沢におかしなヤツだと思われても。


「日時は7月30日。場所は○×ホール。開場は18時だ」


おれはそれを口の中で復唱した。


暗記完了。


そして、頭の中でスケジュール帳を開いた。


えーと、確か、28、29日と県外で試合があった。


29日には帰ってこられる。


しかも30日の練習は軽練。


時間も短い。


チャンス! マジ行ける!


おれは感謝した。


今度こそ、神サマだ。


そうに違いない。


ありがとうございます!


「おれ、頑張るから!」


「え、なにを?」


ワケのわからなそうな中沢だけど、おれはガゼン張り切った。


「頑張ってライブ行くから!」


「いや、フツーに来てくれれば・・・」


「うん、フツーに頑張る!じゃ、おれ、練習があるから!」


わき上がるエネルギーをおさえきれず、おれは走り出した。


やった。 やった! やったァ!!


中沢のライブに行ける。


しかも、中沢本人からのお誘い。


おれは部室まで全力で走り続けた。


そしておれの夏が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ