6章 やる気の夏(1)
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夏。
おれは25歳になった。
20歳になったときと同じだ。
これといって大人になった感じがしない。
けど、おれの自分磨きは続いてる。
諦めるもんか。
追加発注をかけた水着をダンボール箱から取り出した。
女性ものは毎年新作が出るのに、
なんで男性ものって、こうも変わり映えしないんだろ。
おれはその中から一枚を選んだ。
そしてマネキンに着せる。
水着用のマネキンって、結構リアル。
ほどよい筋肉が表現されてて、おなかも割れてる。
マネキンの身長を好みに変えてみた。
170センチくらいかな。
顔はデフォルメされてるけど、首から下はバッチリ。
タイプとしては、もう ちょい細い方がいいな。
ま、イイ体には違いない。
そっと肩に手を乗せてみる。
嫌がらない(当たり前だ、マネキンだもん)。
腰に手を回してみる。
もちろん、嫌がらない(マネキンだってば)。
おれは抵抗しない彼を抱きしめた。
・・・硬い。 そして冷たい(泣)。
「なにやってンのよ、このヘンタイ野朗」
キミちゃんが冷たい視線を投げつけた。
「彼、冷たいから、おれの熱いハートで温めてあげようかと」
「とうとう人を愛せなくなったか、悲しいね」
「キミちゃんもやってみる?面白いよ?」
「遠慮しとく。仲間と思われたくない」
残念。 面白いのに。
「これ、1体くれんかな」
「まずムリだと思うけど。で、もらえたとして、どーすンのよ」
「いつか店を出したときに使うよ。全裸でアクセだけつける」
そして時々、おれが抱きしめる。
「ヘンタイが極まってきたじゃん。そんな店、誰も来ないと思うけど」
言ってろ。おれはやってやるもんね。
おれはまだ抱きしめていたいかったけど、
仕事を進めるために泣く泣くジェフリーを解放した。
ちなみにジェフリーとはこのマネキン。
たった今、名づけた。
夏、か。 ガイと夏と呼べる季節に会ったのは1回だけ。
それも室内。 外に出て遊ぶなんてこと、一度もなかった。
けど、「中沢」とはあった。 大切な思い出だ。




