接近(4)
結局、おれは最後の授業が終わるまで眠り続けた。
目が覚めたおれは、気分ソウカイ。
「よく寝た」
ベッドから足をおろして、上着を着る。
仕切りのカーテンを開けると、保健医の先生がなにやら机で仕事してた。
「よく寝てたわね」
「ええ、まァ」
先生はペンを止めて、おれに近づいた。
「だいぶ顔色もよくなったし」
「はい、おかげさまで」
「でもいきなり部活とかはダメよ?」
「調子いいですよ?」
「だから、昨日もそうだったんでしょ?」
「・・・はい」
そう言われると返す言葉もない。
「じゃ、軽い筋トレくらいなら」
でも、少しだけ抵抗してみる。
先生はため息。
「やるなって言ってもムダだろうし。ちゃんと自分で管理できるなら、許可します」
「ありがとうございます」
いやァ、言ってみるモンだ。
「体操部の監督には連絡を入れておきますからね」
・・・信用されてないな、こりゃ。
「じゃ、失礼しました」
「はい、お大事にね」
保健室を出ると、ドアの横にジャージ姿の上野と・・・。
・・・ほら、あれ。見舞いに来てくれた女子がいた。
「遅い」
睨まれた。
コワイよ、上野。
「仕方ないだろ」
「先輩、体、大丈夫なんですかァ~?」
「あ、ああ。ありがと」
おれはそっと上野に近づいた。
袖を引っ張り、女子から距離をとる。
「あの子、誰?」
上野はこれ以上はムリってくらいに目を見開いた。
「1年の根岸だ!根岸愛香!」
声が大きい。