接近(3)
「し、CD、聴いたよ」
「お前、持ってたのか?」
「いや、真木に貸してもらった」
「そうか。サンキュー」
「・・・いい曲ばかりだった」
「よせよ、照れる」
「・・・いい歌声だった」
声が震える。
「だからやめろって」
中沢は本気で照れてるようだった。
おれの視界が急にボヤけてきた。
「樋口・・・」
「・・・ゴメン。あんなこと言ったりして」
中沢の顔を見た。
中沢の目を見た。
けど、視界はボヤけるばかり。
どうしたんだろ。
「もういい。泣くなよ」
その言葉で気がついた。
おれ、泣いてる。
「中沢が、大切にしてるもの、なのに。おれは・・・」
「分かったから」
言葉は少なかったけど、それだけでも中沢の優しさがいっぱいだった。
普段はゼッタイに見ることのない柔らかな笑み。
おれは手で頬をぬぐった。
「謝りたかったんだ。ちゃんと」
「謝ることなんてないって」
「でも、謝りたかったんだ」
「そうか。じゃ、受け取っておくよ」
「ありがとう」
おれは笑った。
おれの中で、塊が消えた。
キンチョウが解けたのか、眠気がおそってきた。
なんてヤツだ、おれって。
「もう、横になれよ」
「う、うん」
ずっと中沢を見ていたかった。
けど、睡魔がおれをジャマする。
「中沢、今度、歌、聴かせてよ」
それが声となったのかどうかすら、自分でもわからない。
「ああ」
遠くから聞こえるその言葉は、おれを心地よい眠りへと誘った。




