接近(2)
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保健室に入ると、すでに連絡が届いていた。
保健医の先生が仁王立ちだ。
「まだ学校に来るの、早かったんじゃない?」
「昨日までは調子よかったんです」
「だからといって、今日調子がいいとは限らないでしょ?」
はい。その通りです。
でも来たかった。
以前はそんなこと、思ったこともないのに。
「じゃ、ベッドで横になってなさい。薬は持ってるわね?」
「はい。──中沢、ありがと」
おれは中沢から離れようとした。
けど、できなかった。
中沢はおれの腕から手を離すことなく、おれをベッドまで支え続けてくれた。
驚いたけど、ここで過剰反応するのもオカシイよね。
制服の上着だけを脱いで、おれはベッドに入った。
「あ、そだ」
布団の上に投げた制服をたぐりよせ、内ポケットをさぐった。
吸入スプレー薬を口にふくみ、肺へと吸い込む。
即効性の高い薬はすぐに効果を現し、締めつける気管支がゆるんでいくのが分かる。
そして副作用。
脈が乱れ、手が震える。
おれはまだそばにいる中沢に見られないように、手をグッと握り締めた。
「へへ、情けな」
おれは照れ隠しに笑うしかなかった。
「お前、そんな体なのに体操やってんのか?」
「うん、まぁ。あ、でも、いつもこんなんじゃないから」
おれ、今、中沢と会話してる。
副作用とは違う脈の乱れが。
「あ、あの・・・」
言わなきゃ。
「ん?」
中沢は丸イスを引っぱり出して座ると、おれと同じ目線になった。
その顔はいつもの無表情じゃなかった。
優しさを持った表情だった。
ホントは優しいヤツなんだろうな。




