せつない思い (7)
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あの頃はかわいかったものだ。
高校時代のおれは、今のおれからしてみればまるで子供。
周りに目を向けない。 自分のカラに閉じこもるだけの。
自分だけがツライ思いをしてるんじゃないかとすら思ってた。
実際は違うのに。
「ちょっと、小森ィ、飲みがたりんぞォ!」
いけね。
自分の世界にどっぷりだ。
今日は久々に飲みに出てる。
まぁ、一緒に飲むのはいつもの面々。
キミちゃんはすでにデキあがってる。
「小森ィ、なんであんたがゲイなのよ~、ばかァ~」
キミちゃんがおれの頭をぽかぽか殴る。
痛いですけど。
「そうよねぇ。黙ってればイイ男なのに」
アンダー担当の女の子もうなずきながら、ビールジョッキをあおった。
えーと、今の状況をお伝えすると、
10人で勤務先近くの居酒屋に来てる。 で、10人中、男はおれ一人。
どうだ、うらやましいだろ。
ところがだ。
おれは男とは見なされてないようで。
おれとしても異性として意識されても困るし。
「おれなんかに惚れるな。不幸になるぜ」
シブく言ったつもりなんだけど・・・。
「誰が惚れるか!」
そっけなく返された。
「よかった。ずいぶんとほめられたから、もしかしてと思っちゃった。でさ・・・」
さっきから気になってた。
テーブル3つ離れたところで座ってる若い男たち。
おれは小さく指でその方向をさした。
「うん、さっきから見てるよね」
さすが、女の子。
見られることには意識が高い。
「誘ってみれば?」
おれは言ってみた。
まさかあちらさんが、おれを見てるこたァないだろ。
「よォし、そーしよォ~」
酔ったキミちゃんはさっそく手を振った。
ついでにおれも。
「お前が手を振るなァ!」
足蹴り。 痛いってば。
それに、いいじゃん。
減るモンでもあるまいし。
イケメン君だしさ。 見るだけでも楽しいぞ。
ほら来た。 総勢5人。
近くでも見ると、やっぱイイ男。 背も高い。 みんな180センチ以上あるな。
おれは体操選手にしては大型な方だったけど、
それでも165センチ。
体操なんかするんじゃなかった。 クスン。ばかやろ~。
「はじめまして」
先陣を切ったのはチャパツのお兄さん。
とは言っても、おれより年下だろうな、きっと。
「始めましてェ~。一緒に飲もうぜェ~」
キミちゃんのテンションも一気に上昇。
さて、青年諸君。
この子は一見軽いが、身は堅いぞ。
即日お持ち帰りなんてできないと思え。
他の女の子たちも、またしかりだ。
おれは80%を楽しみ、残りの20%を青年たちへの警戒心でカクテルを飲んだ。