表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうかご自愛を・・・  作者: かのい かずき
27/106

せつない思い (5)

「あの、これ。ありがと」


おれは真木にCDを差し出した。


「お?聴いたか?」


「うん、聴いた」


「いい曲だろ?」


「うん、いい曲だった」


知ってた。


少しだけだけど。


けど、おれは「そんなの」と言ってしまった。


おれは今イチバン言わなきゃいけないことを口にした。


「この前はゴメン」


「ん?気にしてたのか?お前らしくないな。ま、おれもいきなりだったし。悪かったな」


違う。 真木は悪くない。


悪いのはおれだ。


「中沢にも謝らないと」


「中沢も気にしてなかったぞ?」


「でも謝りたいんだ」


「好きにしろよ。それでお前の気がすむんならな。それより、また次があったら、一緒に行こうぜ」


誘ってくれるのか?


おれには真木が天使に見えた。


真木の優しさが身にしみる。


ヒドイことをしたおれに、いつもと変わらない態度。


罪悪感だけがふくれあがる。


けど、今は真木の優しさに甘えることにした。


「うん、次はなにがあっても行くから」


「おい、席につけ~」


気がつくと、先生が教壇に立ってた。


「樋口、もういいのか?」


席に戻ったおれは、「はい」と答えたけど、聞こえなかったらしい。


大きく頷いてみせた。


「ヤバかったら言えよ。お前の担当の医者から連絡があったからな」


あの女医め。 よけいなことを。


「中沢は・・・と。まだ来てないのか?」


そうだ。中沢が来てない。


と思ったら。


「おはようございます!」


中沢は猛ダッシュで教室に滑り込んだ。


「・・・セーフっすか?」


その問いに、先生にニヤリと笑った。


「残念、アウトだ」


舌打ちして、中沢は席についた。


「ああ、中沢、それと樋口。進路希望、お前たちだけ出てないぞ。出しとけよ」


「あ、はい。すみません」


おれはうなずくだけ。


2年になったばかりだというのに、もう進路か。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ