せつない思い (4)
そして次の日。
昨日、結構元気だったおれだけど、今はそーでもなかった。
てか、ツライです。
登校はした。
けど、3階にある教室に行くまでが大変だった。
体が思うように動かない。
呼吸がうまくできない。
昨日の夜もなかなか寝られなかったから眠い。
まいった。
来るんじゃなかったかな。
いや、でも、みんなが待ってる。
おれはそれだけをエネルギーにして、手すりと壁をつたいながら教室にたどりついた。
教室から自分の席までが遠い。
やっとの思いで座ると、おれはなんにもできなくなっていた。
ただ座って、肺に入ってこない空気をムダに吸い込むだけ。
「おォ!?樋口ィ~」
寺本だ。
「お前、死んでるな」
1週間休んだのに、最初の言葉がそれか。
「・・・なに?」
声は小さいけど、まだ教室には人が少ないから十分聞こえるはずだ。
「どうしよ。おれのノートがまったくなんよね~。テストも近いしさ」
「おれに、聞いて、どうする」
短い言葉をつむぎだすだけで疲れる。
おれは荒くなりつつある呼吸を、ムリヤリおさえつけた。
「誰でもいい。マジメに、ノートとってそうな、同じ教科担のヤツの、ノートをコピれ。テスト対策は、やってやるから」
「了解した。悪いね~、死んでるのに」
死んでない。
死にかけてるだけだ。
おれは待った。
中沢が来るのを。
あと10分もすれば来るだろう。
気がつくと、周囲はかなりにぎわってた。
どうやら寝てたらしい。
真木がいる。
中沢はと・・・。
いない。
まだ来てないのか。
といかく、謝らないと。
おれはカバンからCDを取り出して席を立った。
よろめきながら真木の席へ向かう。
「あ、あの、真木」
「よォ、体はもういいのか?喘息ってツライんだろ?さっきも寝てたし」
「うん、大丈夫、だと思う」
真木はあの日のことなんて忘れたように、いつもと変わらない。