せつない思い (2)
「いつもクールでスマートなお前が、ああも醜態をさらすなんてねェ」
なるほど。
オミマイとゆー形のイジメか?
「上野先輩、イジが悪いですよォ~。先輩だって心配してたじゃないですかァ~」
「うっせェ、テメェは黙ってろ」
キッと睨むが、女子はプイッと顔を横に向けた。
「だいたい、なんでお前がくっついて来るんだよ」
「くじで決まったんじゃないですかァ~」
「分かっとるわ、ボケ!お前、あとで女子部員になぶりものにされても知らんからな」
「先輩なんて、くじ引き当てたとき、結構うれしそうにしてたじゃないですかァ~。なのに、そんな態度って、あんまりですよォ~」
「語尾をのばすな!うっとうしい!」
「上野先輩ってば、あのあと、すっごく心配して練習に集中できなくて、鉄棒から落ちたんですよォ~。しかも車輪でェ」
ほほォ、車輪で落ちるとは、起用なヤツ。
「やかましい!ヨケーなことを言うな!そもそも女子が男の部屋に来る心境が信じられん!」
「来ちゃいけなかったんですかァ~?」
いや、おれを見られても。
「決まってンだろ!男の部屋には見られちゃ困るモンだってあるんだよ!」
ないです。そんなの。
「エ~、あるんですかァ?」
ないってば。 なにしに来たのよ、二人とも。
がちゃりとドアが開けられた瞬間に、二人の姿勢は伸び、静かになった。
「まぁまぁ、にぎやかねェ。はい、お茶とお菓子持ってきちゃった。あ、カロリーは低いから安心してね」
カロリーうんぬんは女子に向けられてる。
我が母はニコニコ。
ずぅ~っと、ニコニコ。
ニコニコ、ニコニコニコニコニコニコニコニコ。
ニコニコ・・・もういい。
・・・ん?
「母さん、彼女じゃないよ?」
「はいはい。分かってます」
分かってねェだろ。
完全に誤解してるぞ。
ドアが閉まり、母さんが一階におりるのを確認してから上野が口を開いた。
「ほら見ろ。お前、樋口のカノジョ扱いになっただろうが」
いや、間違ってることをそのまま伝えるのはどうかと。
「参りましたねェ~。カノジョにされちゃった。ヘヘ」
「まさか、お前、それが狙いか!」
「違いますゥ~。くじで決まったんですゥ~」
「あの、二人とも・・・」
ハッと我に返った上野はすまなそうに肩をすくめた。
「すまん」