罰(6)
翌朝、おれは母さんに連れられて病院へ行くこととなった。
「よっくん、お母さんお仕事あるけど、ちゃんと診てもらうのよ?」
「分かってるよ。子供じゃないんだから」
いや、まるっきりの子供だな。
結局、一晩徹夜してしまった。
喘息は夜になるとひどくなる。
吸入薬はすぐに効くけど、副作用も強いから何度も使えない。
「樋口さん、どうぞ」
受付から呼ばれたおれは、眠さによろめきながら診察室へと向かった。
「よォ、樋口クン。久しぶりだねェ」
おれの担当医、笹川先生。
女医なんだけど、性格はまさに男。
「喘息の再発かァ。困ったね~」
なにが困っただ。診察しろ。
カルテを見ていた笹川先生は、チラリとおれを横目で見た。
心の中までのぞき込むような目から、おれは顔をそむけた。
「さては恋でもしたかな?」
おれの血が頭へのぼる。
「ち、違います」
「ふうん。ま、いっか。もうそんな年だしね」
違うっつってんだろ。
「極度の興奮が心的ストレスとなる、か。まァ、ないわけでもないか。どれ、服脱げ」
おれは上半身の服だけを脱いだ。
この先生は聴診器を当てるだけでも脱がせる。
「雑音、まだあるね。にしても、イイ体になってきたじゃない。中学のときに比べたら格段ね」
おれは顔を真っ赤にしながら服を着た。
「あれ、怒った?ゴメン。じゃ、本題に入ろうか」
今までは診察じゃなかったのか。
「医師としては、あまりスポーツは勧められないね。これは前にも言ったけど」
そう。中学のときもそう言われた。
適度な運動ならまだしも、体に負担の大きいスポーツは、なるべくなら避けろと。
「でも、やめられないでしょ?」
「……はい」
「命にかかわるとかってほどじゃないけど、キミの場合は心的要因が大きいのよ」
「ストレスなんて、ないですよ」
「それはキミが自覚してないだけ」
カルテになにやら書き込みながら、笹川先生は続けた。
「すでにストレスとなる要因を見つけてるよ?」
はい、なんでしょう。
「素直になりなさい。あなたの年頃になると、当然のことなんだから」
はい?




