1章 怒りのはずが・・・(1)
翌日。
おれは理不尽なガイのメールに気分を害していた。
なんであんなこと言われなきゃいけないんだろ。
なじられたわけじゃない。
気に入らないところがあるって言われたわけでもない。
いや、いっそ、そっちの方がまだいい。
言ってくれれば改善だってできるだろうし。
言葉の少ないメールが余計にこたえる。
・・・痛い。
おれは怒りにまかせてメールを作成。
「このまま言われっぱなしじゃ、それこそマジ勘弁だから、一言物申すよ。 いつまでこんなことを続けるの? 気に入らなくなったら捨てる。 それでいいの? これからもそんな付き合いを続ければ、いつかガイを悪く言う人が出てくるよ。 もう少し、誠実な生き方を学習することをすすめるよ」
送信。
ちょっと気分が晴れた。
晴れた気分はすぐにくもった。
・・・送んなきゃよかった。こんなことをしてもガイは戻ってこないのにさ。
ま、送ってしまったものはしょうがない。ガイがこのメールを読んで反省してくれればそれでいい。
そうでないときは、ガイは寂しい人として生きる続けるんだろうな。
「小森クン、元気?」
同僚の君里さん。
キミちゃんって呼んでる。レディースカジュアルを担当してる女の子。
フラれてからというもの、おれを気遣ってくれる。
一見軽い子に見られやすいけど、ホントは優しい子なんだ。
「元気だよ」
おれは笑った。それが元気の証。
おれはバックルームで商品を検品しながらガイの顔を思い浮かべた。
商品の中にガイに似合いそうなアイテムがあったからだ。
それをじっと眺めた。
もう会えないんだ。
強引に会いに行くことはできる。
イヤがるな、きっと。
そんなのイヤだ。これ以上嫌われたくないし、大切な人がイヤがることもしたくない。
なんでおれがここまでヘコまなきゃいけないんだろ。
おれ、なんか悪いことしたんかな。
・・・まったく記憶にございません。
てのはウソ。もしかしてってのはあったりする。
それは言ってくれればいい、ささいなことだ。
ガイに何があったんだろ。
冷たい一面を持っていたのは気づいてた。
けど、基本的には優しい人だった。
その彼をして、ここまで言わせた原因って何だろ。
怒っていい。
これは理不尽なフラれ方だ。
ガイをせめていい。
正しいとまでは言わないけどさ、おれは間違ってない・・・。
・・・はず。
それなのに、なぜかおれは罪悪感。
ホント、何したんだろ。