罰(3)
真木に感謝してるのに、おれってば・・・。
「ダメ。一日でもサボッたら、調子狂うから」
そんなに真剣に練習してないクセに。
中沢と目が合った。おれの心臓がバクバクなってきた。
「悪いけど、ほか当たってよ。この時期にそんなことに時間を費やしてるヒマないんだ」
おれは悪魔の手先か。
よりにもよって、「そんなこと」とは。
真木もそのワードが気にサワったらしい。
中沢といえば、見るのもコワイけど、目に入ってくる。
・・・無表情。なにも言わないけど、怒ってるよね。きっと。
「おい、そんなことってなんだよ」
真木が立ち上がった。
そうだ。その言い草はなんだ。
おれの中でもおれ自身が責めてる。
けど、悪魔の手先は止まらない。
「遊びに付き合ってられんしさ」
おれはもはや興味なしと教室を出ようとした。
いや、ホントは逃走。
もう、ここにはいられない。
「お前なぁ!」
真木がおれの腕を取った。
殴られるかと思った。
その目は完全に怒ってた。
おれはその目を受け止めることができず、そらしてしまった。
真木は中沢の歌がホントに好きなんだって分かった。
けど、真木は大人だった。
「もういいよ。悪かったな、誘ったりして。試合、頑張れや」
真木はおれの腕を解くと、顔をそむけた。
二度と見たくないと言わんばかりだ。
「そうさせてもらうよ」
中沢の視線を感じながら、おれは教室を出た。
どうやら、おれが感謝したのは神サマなんかじゃなかったらしい。
いや、違うな。
おれが悪い。
素直になれないおれが。
おれ自身が邪魔をした。
なんてオロカモノなんだ。
歩いていた足が次第に速くなる。
自分への怒りに、かんだ唇から血の味がした。
もうダメだ。
中沢を怒らせたかもしれない。
中沢の大切にしてるものを、おれは・・・。
初めて思った。
死にたいって。
目に涙が浮かぶ。
一度でもまばたきしたら、涙が流れそうになる。
おれは部室まで、一度ももばたきをしなかった。